生理は女性にとって健康状態のバロメーターでもあります。
生理の基礎知識や、生理中でも快適に過ごすためのセルフケアをご紹介。
将来の妊娠と健康のために。婦人科医が語る“正しい知識”と選択肢 HMレディースクリニック銀座 升田 博隆先生
インタビュー
mederi magazineでは、「ピルや生理ケアに関する知識を専門家である医師と一緒に啓蒙をしていきたい」という想いから、mederi株式会社代表取締役の坂梨 亜里咲(さかなし・ありさ)と医師による対談インタビュー連載をお届けします。
今回、インタビューするのは、2020年6月に東京都・銀座に開院された「HMレディースクリニック銀座」の升田 博隆(ますだ・ひろたか)院長。
HMレディースクリニック銀座は、東京都・銀座にあるクリニックです。
院長の升田医師は、生殖医療専門医、内分泌代謝専門医、内視鏡技術認定医等の資格を有し、慶應義塾大学病院では生殖内分泌(ホルモン異常・体外受精等)と生殖外科(不妊に関連する内視鏡手術)を専門とした医療を行っており、その経験を活かし現在は不妊症や月経異常そして子宮内膜症、子宮筋腫、子宮(頚管/内膜)ポリープなどの婦人科良性疾患の治療に注力しています。
「痛みの少ない医療」を診療のモットーにしており、診療や検査時には痛みを最小限に抑えることを心がけており、患者さまが安心して相談できる環境が特徴です。
銀座駅から徒歩2分の立地にあり、受付時間は20時までのため、働いている女性でも通いやすいクリニックです。
今回は、HMレディースクリニック銀座の升田院長に、患者さまからの信頼と安心を届けるために大切にされていることや、mederi Pill(以下、メデリピル)との共通の想い、そして今後に期待することについてお話を伺いました。
インタビュアー:mederi 代表取締役 坂梨 亜里咲
升田 博隆(ますだ・ひろたか)院長
日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医
日本生殖医学会認定生殖医療専門医
日本産科婦人科内視鏡学会内視鏡技術認定医(腹腔鏡)
日本内分泌学会認定内分泌代謝科(産婦人科)専門医
日本再生医療学会認定再生医療認定医
日本女性医学学会認定女性ヘルスケア専門医
日本子宮鏡研究会認定オフィス子宮鏡手術認定医
日本産科婦人科学会
日本生殖医学会(代議員)
日本産科婦人科内視鏡学会
日本受精着床学会
日本内分泌学会(評議員)
日本生殖内分泌学会
日本エンドメトリオーシス(子宮内膜症)学会
日本女性医学会
日本再生医療学会
日本子宮鏡研究会(常務理事)
1997年に慶應義塾大学医学部を卒業後、同大学病院などで産婦人科医としての経験を積み、国内複数の医療機関で勤務。2009年からはオーストラリア・モナッシュ大学で博士研究員として研究にも従事し、帰国後は慶應義塾大学医学部の専任講師として後進の育成にも携わる。2020年よりHMレディースクリニック銀座の院長として、生殖医療の現場で診療にあたっている。
もくじ
銀座で「女性のためのクリニック」を始めた理由

-銀座でクリニックを開業されたのは、どんなきっかけですか?
私が継承した医療法人「清和会」は、曽祖父が70年近く前に設立したものなのです。元々は横浜を拠点にした、地域密着型の医療法人でした。「この大切な場所を絶やしたくない」そう思った私は、前任の先生が退職するタイミングで決意を固め、当時いた慶應義塾大学病院を離れ、新たな場所での開業を決意しました。
忙しい日常の中でも、仕事帰りにふらっと立ち寄れるような、そんな街を探して、いろいろ悩んだ末に辿り着いたのが、銀座でした。
交通の便も良くて、遠方からも通いやすい。しかも華やかで、ちょっと背筋が伸びるような場所。女性が「自分を大切にする時間」を過ごすには、ぴったりだなと思ったのです。
物件探しも、区役所や保健所への手続きも、ロゴの創作も、全部ひとつひとつ自分で行いました。少し大変でしたが、その分、HMレディースクリニック銀座には、私の想いがたくさん詰まっています。
20〜30代女性たちが銀座という街で抱えるリアルな悩み

-来院される患者さんには、どんな方が多いのでしょうか?
来院される患者さんの約8割は、働く女性たちです。特に銀座エリアや周辺でお勤めの方が多く、年齢層は20〜40代が中心です。日々忙しく働く中で、自分の体調に違和感を覚えたとき、スマホで検索して当院を見つけてくださる方がほとんどです。
来院のきっかけとして多いのは、不妊症で全体の半数ほどを占めています。
それ以外にも、デリケートゾーンのかゆみや不正出血など、「誰かに相談したいけど、なかなか言い出せない」ような症状で足を運んでくださる方が少なくありません。
季節によっても多少症状は変わりますが、かゆみや痛み、帯下異常、不正出血、腹痛などで受診される方、そして婦人科検診で異常を指摘されて来院される方も多いです。
-大学病院勤務時代と開業後の患者さんの違いややりがいは?
大学病院では、日々、他院では対応できないようなより専門的で複雑な症例に向き合っていました。今のクリニックでは、もっと“日常的(一般的)な症状”を対照とした診療ですが、大学病院で行っていたレベルで届けられている実感があります。
特に不妊症の患者さんの場合は、少し治療を施すだけで、妊娠につながることも少なくありません。現在は体外受精を行っていませんが、最小限の治療で妊娠されるとその瞬間を一緒に喜び合えることが、私にとって何よりのやりがいです。 患者さんの笑顔に直接触れられる距離感も、開業して良かったなと思える理由のひとつです。
専門分野「生殖内分泌」と手術へのこだわり

-生殖外科に取り組もうと思ったきっかけは?
もともと外科的な治療(手術)にやりがいを感じており、手術によって悪い部分を取り除くことで、症状の改善や妊娠率の向上などすぐに手応え(成果)を得られる点に魅力を感じていました。
生殖内分泌と鏡視下手術(腹腔鏡手術や子宮鏡手術)を専門としたのも、専門的な知識と手術を通じて患者さんに貢献したいという思いからです。
-どんな手術が多いですか?
当院では腹腔鏡の手術はできないため、子宮鏡の手術を行っており、中でも「子宮内膜ポリープ」の手術を多く行っています。子宮内膜ポリープは不妊の原因のひとつとされ、特に30〜40代の不妊女性に多くみられます。当院では麻酔を使わず、外来で日帰り手術として行っていて、忙しい女性にとっても通いやすい治療法です。
私は2013年から無麻酔での外来子宮鏡手術に取り組んでおりますが、当時の日本では外来で子宮鏡手術を行うこと自体ありませんでした。最初は教わることができないため試行錯誤の連続でしたが、日本でも十分に可能な手術である良い手術であることを実感しました。そこで、学会での講演やハンズオンセミナーの講師を行うことで普及活動も行っており、今では少しずつ普及してきています。
一般的には子宮鏡手術は入院が必要で時間もとられ費用も高くなるケースが多いのに対し、(対象疾患は限られますが)当院の外来手術は日帰りで受けられるため、時間と費用の削減ができるのが強みとなっています。
私はこれまで700人以上の患者さんに外来子宮鏡手術を行ってきましたが、その実績も評価され、さまざまな医療機関から患者さんを紹介していただいています。

△清潔感のある待合室
将来の妊娠のために。ピルで整える”という選択

-ピルを使った月経コントロールやホルモン調整に対して、どうお考えでしょうか?
当院では月経不順やホルモンバランスの乱れに悩む方に対して、カウフマン療法やホルムストローム療法、更年期障害に対するホルモン補充療法、ピルの処方など、症状やライフスタイルに合わせて最適な治療法をご提案しています。
ピルは必要な方にしかおすすめしませんが、抵抗感を持つ患者さんには、まずは漢方などから始めて、少しずつ体を整えながら必要に応じてピルに切り替えるケースもよくあります。
ピルへの抵抗感の多くは「血栓ができるのでは?」というご不安からきています。。しかし、血栓症のリスクはそれほど高いものではなく対策等の知識を持つことが重要であることや、妊娠中のほうが血栓のリスクは高いことなどを丁寧に説明し、ご納得してもらった上で処方をしています。また、ピルは種類によって効果や副作用が異なるため、不正出血やニキビなど症状に合わせて処方するピルの種類を使い分けており、患者さんに快適に過ごしていただけるよう心がけております。
-ピルの認知度は高まってきていますか?
はい、確実に増えてきていますね。特に、「友達や知人が使っていてとても良いと聞いた」と、不安なく希望される方も多くなっています。
口コミや周囲の影響で使用を希望されるケースが多い印象です。
最近では、日本で初めて承認されたミニピル「スリンダ」の登場も話題になりました。これまでよりも選択肢が広がったことで、より認知度が高まることを期待しています。
-ピルの副作用や誤解についてどう思いますか?
「ピルを服用すると太る」という誤解がありますが、摂取カロリーが変わらなければ太ることはありません。正確に言うと多少は脂肪を落ちにくくする作用がありますが、現在使用されている低用量ピルや超低用量ピルではその作用は体重増加に影響しないと考えられています。体のむくみや食欲増進による体重増加はありますが、一過性のことが多いです。
また、「妊娠しづらくなる」という誤解も根強いですが、そのようなエビデンスはなく、そもそも将来的な妊娠を妨げるような薬であれば、日本で承認されることはありません。
むしろ、ピルを飲まずに放置することで、骨粗鬆症、子宮内膜増殖症、子宮内膜癌などの将来的なリスクが高まることがあります。ピルには副作用もありますが、それ以上に多くのメリットがあり、正しい知識をもって使用することが大切だと考えています。

△女性の月経に関わる「月」と排卵の丸をモチーフとしたロゴのある受付
ピルは処方薬。“ネット通販での購入”や”専門外の医師による処方”に潜むリスクとは?

-オンライン診療でのピル処方についての不安はありますか?
当院にも、オンライン診療によりピルを処方されている方が、不正出血などの症状があって受診されることはありますが、これまで大きなトラブルはありません。
心配なのは、オンライン診療もなく、ネット通販で並行輸入品等を購入して服用してしまうケースです。我々が使用しない日本で未承認の薬もあり、自己判断での間違った服用法を継続していることや、副作用やリスクを知らず体調の変化に気づけないこともあり、危険なケースもあります。
きちんと診察を受けて、医師と相談しながらピルを使うことが大切です。
ホルモン療法は産婦人科の中でも特に専門性が高く、患者さん一人ひとりの体調やライフステージに合わせた、きめ細やかな対応が求められます。
-メデリピルのようなオンライン診療サービスに期待することは?
オンライン診療の一番の利点は、忙しい中でも自分のタイミングで診療やピルの処方を受けられる利便性の高さと安全性だと思います。
ただ、安心して長期に服用継続するためにも、年1回程度の対面での診察が望ましいと思います。
月経困難症やPMSなどで悩んでいる方が、経済的な理由で我慢せず、きちんと治療を受けられる環境、オンライン診療と対面診療、それぞれのメリットを生かしながら、安心・安全にピルを続けられる環境が広がっていくことを望んでいます。
妊活、迷ったらまず相談を。パートナーとできる一歩とは?

-子供を授かりたいと思ったとき、 まず受けておくべき検査はありますか?
私は、ブライダルチェックよりも、まずは妊活を開始して、実際に妊娠できるかどうかトライしてみるようお伝えしています。すでにご結婚されている20代〜30代前半の方には、いきなり検査や治療に進むよりも、まず自然に妊娠するかどうかを見てから、それでも妊娠に至らない場合に検査や治療を考えるというスタンスです。もちろん、子宮筋腫や子宮内膜症等の器質的疾患や感染症、そして子宮癌がないことが前提なので、まず基本的な婦人科的な診察は必須と考えています。
その他にあえて挙げるなら、卵巣機能を確認する血液検査(AMH:抗ミュラー管ホルモン等)を行うことで、卵巣の予備能力(卵巣年齢)の目安を知ることができるので、将来に向けたプランニングの判断材料になることもあります。
自然妊娠できる方にとっては、初期段階での検査は不要なことも多く、あれこれ検査するより、「まず行動してみる」ことが大切です。一方で、未婚の方や将来に備えたい方でブライダルチェックを希望される場合には、年齢やバックグラウンドに応じた検査項目を提案しています。
-日本産婦人科学会では「不妊症=妊娠を望む健康な男女が、避妊をせず1年間性交しても妊娠しない状態」と定義されていますが、HMレディースクリニック銀座ではどのタイミングで受診を勧めていますか?
当院では、年齢にもよりますが「半年」を目安にしています。来院される時点で不安を抱えている患者さんが多いため、1年間待つのは精神的な負担が大きすぎると考えています。実際には、半年に満たなくても、気持ちが滅入ってしまうようであれば、早めに来ていいと伝えています。
中には、2〜3回のトライで妊娠される方もいれば、そうでない方もいます。ただ、たとえ妊娠に至らなくても「妊娠の可能性がある」とわかるだけで安心につながることもあります。1回の夫婦生活での妊娠率は約20%程度ですから、はじめから焦らずに少しずつ取り組んでほしいと思います。
早い段階で受診しても、最終的な治療方針は変わらないケースも多いのが現実です。ただし、20代後半〜30代で、まだ結婚が決まっていない方の場合は、ブライダルチェックによって「早発卵巣機能不全」などの卵巣機能の低下が発見されることもあります。そういった方には、卵子凍結という選択肢があるため、将来の妊娠に備えることができます。
一方で、すでに結婚されていて「1年後には子どもを授かりたい」と明確な目標がある方には、「まずはなるべく早くトライを始めましょう」とお話しプランを立てていきます。なお、男性側については、精子のスクリーニング検査を行っています。
また、当院では夜間のオンライン診療(要予約・自費)でお顔を拝見しながらのカウンセリングも行うことができます。こうした柔軟な対応ができるのは、開業医ならではの強みだと思っています。
-子どもを望む方に向けて、医師として伝えたいことはありますか?
ストレートな表現になりますが、妊娠を望むのであれば、「しっかり夫婦生活を持つこと」とお伝えしたいです。なかなか妊娠に至らないご夫婦の中には、夫婦生活の回数が非常に少ない、いわゆるセックスレスの状態であるケースが少なくありません。
世界的に見ても、ここまで夫婦生活の回数が少ないのは日本くらいです。特に排卵日を意識して行うと、かえってプレッシャーが強くなり、逆にうまくいかなくなることもあります。長くレスだったご夫婦が、いきなり妊活を始めてもうまく進まないのは、ある意味自然なことです。
忙しく働く中で、パートナーとの時間を確保するのは簡単ではないという事情もよくわかります。それでも、将来生まれてくるお子様のために休日などに2人でゆっくり過ごす時間を大切にすることが、妊活の第一歩になると考えています。
-最後に、mederi magazineを読んでくださっている20〜30代の方々に向けて、メッセージをお願いいたします。

産婦人科って、どうしても「できるだけ行きたくない敷居が高い診療科」ですよね。そのせいで、悩みを抱えたまま長い間放置してしまう方も少なくありません。でも、本当は一人で悩む前に来てほしいと思っています。
症状が悪化してから来るのではなく、例えば「生理痛がひどくなってきた」という段階で相談に来てほしいんです。常に痛み止めが必要な生理は、決しては“正常”ではありません。早く受診していれば、子宮内膜症や子宮腺筋症など、重大な病気が早期に見つかることもあります。
「男性医師だから相談しにくい」と思われるかもしれませんが、「男性にはない悩み」だからこそ真摯に受け止められることもあると思います。内診は器質性疾患の有無や痛みの位置を確認するのに重要ですが、無理な内診は行いませんし、経腹超音波やMRI診断などで代替するなど、できる限り配慮しています。特に10代の方や性交経験がない方には、内診がトラウマにならないよう最大限の注意を払っています。
不安や違和感があれば、「相談だけでもしてみようかな」と思っていただけると嬉しいです。
□HMレディースクリニック銀座
〒104-0061
東京都中央区銀座三丁目4番16号 銀座サニービル東側4階
※入り口はレンガ通り沿い(銀座ハゲ天 本店と同じビル)
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