“あたりまえ”を丁寧に。すべての人の選択肢を支える生殖医療へ 藤沢IVFクリニック 佐藤 卓 先生

インタビュー
更新日:2025.07.25
“あたりまえ”を丁寧に。すべての人の選択肢を支える生殖医療へ 藤沢IVFクリニック 佐藤 卓 先生

mederi magazineでは、「ピルや生理ケアに関する知識を専門家である医師と一緒に啓蒙をしていきたい」という想いから、mederi株式会社代表取締役の坂梨 亜里咲(さかなし・ありさ)と医師による対談インタビュー連載をお届けします。

今回、インタビューするのは、2024年8月に神奈川県・藤沢市に開院された「藤沢IVFクリニック」の佐藤 卓(さとう・すぐる)院長。

藤沢IVFクリニックは、神奈川県藤沢市にある体外受精を中心とした不妊治療専門のクリニックです。
生殖医療の専門医が在籍し、最新の医療技術と丁寧なカウンセリングを通じて、一人ひとりに寄り添った診療が特徴です。

完全予約制で通院回数を最小限に抑え、仕事や日常生活と両立しやすい環境づくりにも配慮しており、藤沢駅から徒歩6分というアクセスの良さと、穏やかな環境も魅力のひとつです。

今回は、藤沢IVFクリニックの佐藤院長に、患者さまからの信頼と安心を届けるために大切にされていることや、mederi Pill(以下、メデリピル)との共通の想い、そして今後に期待することについてお話を伺いました。

インタビュアー:mederi 代表取締役 坂梨 亜里咲

佐藤 卓(さとう・すぐる)院長

日本産科婦人科学会 産婦人科専門医・指導医
日本人類遺伝学会 臨床遺伝専門医
日本生殖医学会 生殖医療専門医
母体保護法指定医師
日本産科婦人科学会
日本生殖医学会(代議員)
日本人類遺伝学会
日本受精着床学会(評議員)

2002年に岩手医科大学医学部を卒業後、慶應義塾大学医学部 産婦人科学教室に入局。以後、同教室で助手・助教として診療・指導に従事。

2020年には医療法人財団荻窪病院・虹クリニックの院長に就任。長年にわたり生殖医療・不妊治療の現場で専門性を深めた後に、2024年8月より、藤沢IVFクリニックの院長に就任。

なぜ産婦人科医に?佐藤院長の原点と生殖医療への想い

-佐藤院長が産婦人科医、そして生殖医療を選ばれたきっかけを教えてください。
父も祖父も産婦人科医で、母方には整形外科や内科医が多いという家庭環境で育ち、子どもの頃は心臓外科医に憧れていました。大きな転機は中学生のとき、父が部長を務めていた福島医大の教室で、日本で初めての顕微授精が行われたことに大きな影響を受けました。

その頃から、「ヒトが神の領域にどこまで踏み込めるか」という倫理的なテーマや、体外受精という技術の持つ可能性に強く心を動かされ、「この道で生きていこう」と決意しました。

“藤沢での開業”に込めた想いと、生殖医療に特化した診療方針

-藤沢IVFクリニックにはどんな患者さんが多く来られていて、主にどのような治療を提供されていますか?
クリニックの名前にある通り、私たちは体外受精(IVF)を中心とした診療を行っています。いわゆる「不妊症」で赤ちゃんを望むご夫婦が多く来られますが、単に治療を行うだけでなく、生殖医療の技術や意義をより多くの人に伝える「情報発信」にも力を入れています。

-藤沢に開業されたきっかけを教えてください。
家族の「自然豊かなところで暮らしたい」という希望が一番大きかったですね。
妻がかつて住んでいたサンフランシスコのように、海や山に囲まれて穏やかに暮らせる場所を求めていました。

-藤沢には以前から馴染みがあったのですか?
観光で鎌倉や藤沢に来ていました。中でも「体外受精を必要とするより多くの患者様の力になる」という観点から、アクセスの上で藤沢が絶好の場所であると判断しました。

-貴院ならではの特徴はどんなところですか?
当院が大切にしているのは、「あたりまえのことを、丁寧に行うこと」です。 科学的な根拠に基づきながらも、「こうすべき」と決めつけるのではなく、患者さんが納得して選べることを何より重視しています。そのため、利用可能な検査や治療について、わかりやすく丁寧に説明し、選択肢をご提示するよう心がけています。 また、ホルモン療法を活用することで、治療とお仕事や生活との両立がしやすくなるよう、スケジュール面でも工夫しています。 使用する技術自体は、奇をてらった新しい方法ではありません。むしろ、確かな経験に裏打ちされた「あたりまえの医療」を、丁寧に提供することを信条としており、そうした姿勢に共感してくださる患者さんが多いのも特徴です。

“ファミリープラン”と不妊治療のステップ

-私は不妊治療を27歳から始め、すぐに体外受精・顕微授精へ進んだのですが、先生のクリニックではどういうステップで治療をされる方が多いですか?
患者さんの中には、 まずはタイミング療法や人工受精などから試していきたいという方もいれば、最近は最初から体外受精を希望される方も増えてきています。こうした治療の選び方については、実は医療者の間でも考え方に違いがあります。一部の専門家は「まずは侵襲の少ない方法 (人工授精など)から段階的に進めるべき」と考えますが、別の立場では「妊娠の可能性を最大化するために、初めから体外受精に進む方が合理的」とする声もあります。年齢や治療歴、 ご希望に応じて、 最適な選択肢は変わってきます。 大切なことは、 診療中の対話を重ねる中で「自分達はどうしたいのか」をカップルが整理して考えられることです。 そのためにも、 正確な情報をわかりやすくお伝えし、 ご納得のうえで検査や治療を選んでいただける環境づくりが大切だと感じています。

現代の体外受精は、 受精卵を一度凍結してから移植することが標準的な流れとなっており、その成功率だけではなく、 その安全性に対する信頼も高まっています。こうした技術を活かせば、例えば将来的に3人、 4人のお子さんを望まれる場合でも、早い段階で複数の受精卵を凍結しておくことにより、 ご自身のライフプランや家族計画を現実的に描くことが可能となります。 無理のないペースで、望むタイミングに合わせて家族を築いていくために、 体外受精は確かな選択肢となるでしょう。

-子どもがなかなか授からないとき、まず何をすべきですか?
日本産科婦人科学会の定義によると、「日本では妊娠を望む健康な男女が、避妊をしないで性交していたにもかかわらず、1年間妊娠しない場合」を「不妊症」といいます。
しかし、他の動物に比べて、ヒトはそもそも妊娠しにくい生き物です。健康なカップルでも、1周期あたりの妊娠率が20%程度であるとすれば、 少なくとも1年で14%、2年でも46%以上ものカップルが妊娠できない計算になります。「1年で妊娠できなかったら、 病的である」とは本来であれば言い切れない部分もあります。

それを踏まえて、 子どもをなかなか授かれないカップルは、まずは焦らないことが大事です。そして、排卵の有無・卵管・精子の3つの基本的な検査を早めに受けてみると良いですね。重く考えすぎず、「一度話を聞きに来る」くらいの気軽な気持ちでいいと思います。


△やわらかな陽射しが差し込む、明るく開放感のある院内

不妊治療と仕事、両立を支える環境づくり

-仕事と治療を両立している方を見ていて、何か感じることはありますか?
本当に多くの患者様に、 お忙しい中で足を運んで頂いております。 社会の中で重要な役割を果たしながら、 ご自身の将来に備えようとする姿勢には、 いつも頭が下がる思いです。ただ、 私自身、治療のために大切なお仕事を辞める必要はないと考えています。 当院ではWi-Fiを完備した部屋をご用意しており、 実際に診療の合間にお仕事をなさる方もいらっしゃいます。どんなかたちでも、 仕事と治療の両立を応援できる場でありたいと考えています。

体外受精は、 そんな「仕事と治療の両立を可能にする技術」だと思っています。ホルモン剤を駆使することにより、 診療のスケジュールを柔軟に組むことが可能となります。むしろ忙しい方々にこそ、体外受精の診療をおすすめしたいですね。


△テレワークに使用できる多目的ルームを完備した待合室

いつかのために。「卵子凍結」という、未来への選択肢

-現在パートナーがいない方の卵子凍結について、どうお考えですか?
年々、卵子凍結を希望する方は増えています。東京都では2023年9月には卵子凍結の助成金制度※がスタートしています。当院のある神奈川県をはじめ、 まだ全ての都道府県で制度化されていないのが現状ですが、それでも卵子凍結を希望する人は着実に増え続けています。卵子凍結は、ここ10年で技術的に大きく進歩し、現在ではガラス化法という急速凍結の技術によって、卵子の生存率や受精後の受精卵の発育率も安定してきています。年齢とともに低下する妊孕性(妊娠する力)の問題を克服するために、卵子凍結は将来を見据えた合理的な選択肢であると思います。

※参考:東京都福祉局

-受精卵凍結と比べてどうでしょうか?
パートナーがいる方には受精卵凍結が有力な選択肢ですが、今はまだパートナーがいない方や自分の意思で将来に備えて準備したい方にとっては、卵子凍結が汎用性の高い選択肢となると思います。
人生はいつどのように変化するかはわかりません。女性にとって有用な財産として捉える方も今後は増えていくと思います。卵子を「将来の様々な可能性をつなぐリソース」として捉える方は、これからますます増えていくのではないでしょうか。

ピルに対する誤解とオンライン診療の可能性

-我々が提供しているプラットフォーム(メデリピル)について期待することを教えてください。
日本では長らく、ピルを処方すること自体に対して抑制的な空気がありました。そうした中で、メデリピルのようなオンライン診療サービスによって、より多くの人がピルにアクセスできるようになったのは、大きな変化だと思います。

忙しい人でも、 クリニックに足を運ばずに正しい説明を受けることができて、 安心してピルを使えるのは大きなメリットです。必要としている人のもとに、必要な医療がきちんと届く。そうした仕組みが広がってきていることは、時代の変化を象徴していると感じます。

そして今後も、ピルの利用が「女性にとって当たり前の選択肢」として、さらに広がっていくことを期待しています。

-ピルを飲むことで将来不妊になるのでは?という誤解を持つ人も多いですが…
実際のところ、そうした心配はほとんどありません。むしろ、たとえば子宮内膜症の進行を抑えるなど、ピルには生殖医療の面でもメリットとなり得ます。

ただ、これまで日本では、ピルに対してネガティブな印象が根強く、その背景には産婦人科医自身が普及を妨げてきた側面もあると感じています。血栓症などのリスクばかりが強調され、実際にはごく一部にしか起きない副作用についても過度に説明されてきました。私自身も、そうした教えを受けてきた世代のひとりです。もちろん、リスクがまったくないわけではありません。血栓の素因があるかどうかを見極めるための丁寧な問診や検査は大切ですし、それが患者さんの安心にもつながると思います。ただ、それでもなお普及が進まなかったのは、やはり医療側の意識に原因があったのではないでしょうか。
最近は、学会や医療の教育体制も変わり、ピルに対する理解が進んできました。例えば、
「日本更年期医学会」が「日本女性医学学会」のように名称を変えたことは、女性の健康をライフステージ全体でとらえるという意識の広がりを象徴しています。こうした変化は、ピルを単なる避妊薬としてではなく、女性のQOLや将来設計を支える医療として捉える動きにつながっており、大きな前進だと感じます。

ピルの服用によって排卵を抑えることで、卵巣への負担を減らすことができると報告する研究者もいます。卵子の元になる卵母細胞は、出生前から出生後、 閉経までの全期間を通じて少しずつ減っていく大切な細胞です。ピルを使うことでその消耗を抑えられる可能性があります。 長期的には妊娠可能な期間を少しでも延ばす助けになるかもしれないという考え方です。これには相反する報告もありますが、 「長く使うと妊娠しづらくなるのでは」といった不安を抱える方にとっては、 こうした知見が安心材料のひとつになるかもしれません。

さらに、子宮内膜症のみならず、 ニキビといった症状にもピルには効果があり、美容面やQOLの向上を期待して使う人も増えています。避妊という目的にとどまらず、ピルが多様なニーズに応える医療として選ばれるようになったことは、女性の生き方が多様化する現代を象徴する変化だと感じています。ピルを通じた自己決定がもっと自然に、そして肯定的に受け入れられる社会であることを心から願っています。

-最後に、mederi magazineを読んでくださっている20〜30代の方々に向けて、メッセージをお願いいたします。

妊娠を目指す方も、まだ迷っている方も、できるだけ「焦らず、でも淡々とできることをやる」ことを大切にしてほしいと思います。ヒトの妊娠は、ある日突然叶うことも多いです。どんなタイミングでも結構ですので、 困ったらぜひ私たち藤沢IVFクリニックに頼ってください。

□藤沢IVFクリニック

〒251-0052
神奈川県藤沢市藤沢218-1 スクエア藤沢 3F
JR藤沢駅 徒歩6分
小田急江ノ島線藤沢駅 徒歩6分
TEL:0466-47-2101
https://fujisawa-ivf.com/

※1 初月無料は低用量ピルのみ対象となり、別途送料550円(税込)かかります

※2 低用量ピル/超低用量ピルのみ対象となります

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