生理は女性にとって健康状態のバロメーターでもあります。
生理の基礎知識や、生理中でも快適に過ごすためのセルフケアをご紹介。
授乳中のピルの服用がダメとされる理由は?産後いつから再開できるかを解説
「産後そろそろピルを再開したいけれど、授乳中に飲んで赤ちゃんに影響がないかな…」とお悩みではありませんか?授乳中のピルは、母乳による赤ちゃんへの影響、産後の血栓症リスクから原則として控えることが推奨されています。
この記事では、授乳中のピルがなぜダメといわれるのか、再開できる時期の目安や授乳中に選べる避妊法、授乳中の生理痛のケアまでをまとめました。産後の毎日を安心して過ごすための参考にしてみてください。
もくじ
授乳中のピルは原則として控える
授乳中にピルを控える理由は「母乳と赤ちゃんへの影響」と「産後に高まる血栓症のリスク」の2つで、多くの低用量ピルの添付文書では授乳婦への投与が禁忌とされています 。それぞれの理由について詳しく見ていきましょう。
授乳中のピルの使用は「ダメ」といわれる理由
低用量ピルの添付文書には、禁忌(飲んではいけない人)として「授乳婦」と「産後4週以内の患者」が挙げられています。 理由として、母乳の量的・質的な低下が起こることや、母乳中への移行によって赤ちゃんに黄疸や乳房腫大が報告されていることが記載されています 。
また、産後は出産に伴って血液が固まりやすい状態が続いています。エストロゲン(卵胞ホルモン)を含むピルを産後の早い時期に飲み始めると、血栓症のリスクがさらに高まると考えられています。
母乳とお母さんの体に起こりうること
授乳中にピルを飲むと、母乳の量や質が下がることに加えて、産後に高まっている血栓症のリスクをさらに上げてしまう可能性があります 。
ピルにはエストロゲンという卵胞ホルモンが含まれており、このホルモンの影響で母乳の量が減ったり質が悪くなったりする可能性があります。場合によっては、母乳が完全に止まり授乳ができなくなってしまうこともあります。
そのほかに気をつけるべきなのは、血栓症です。出産は多量の出血を伴うため、普段以上に体内の血液凝固作用が働いている状態になります。その分血栓もできやすく、妊娠中〜産後は血栓症の発症リスクが高くなっています。ピルに含まれるエストロゲンという卵胞ホルモンにも血液凝固作用があるため、産後すぐピルの服用を再開すると血栓症リスクがさらに高まってしまうのです。

上記のような血栓症の兆候が見られた場合、服用を中止して速やかにピル処方元の病院を受診してください。
産後すぐ授乳を始める方も多いかと思いますが、ピルを再開する際は医師から問題がないことを確認したうえで始めましょう。
赤ちゃんに起こりうること
赤ちゃんの体はまだピルの成分を分解する力が育ちきっていないため、お母さんが飲んだ薬の影響を受けやすいと考えられています 。お母さんがピルを飲むと母乳にもその成分が混入し、最終的に赤ちゃんの体内に入ることになるため、授乳中はピルの服用を控える必要があります。ピルの影響として、黄疸や乳房腫大が生じることもあるとされています。
心配なことがあるときは、かかりつけの小児科などに相談してみましょう。
ピルは産後いつから飲める?
産後のピルの服用は、母乳育児をしている場合としていない場合で変わってきます。それぞれ見ていきましょう。
| 産後の状況 | ピルを再開できる時期の目安 |
|---|---|
| 母乳育児をしている | 産後6か月以降 |
| 母乳育児をしていない(血栓症の危険因子なし) | 産後21日以降 |
| 母乳育児をしていない(血栓症の危険因子あり) | 産後42日以降 |
母乳育児をしている場合は産後6か月以降が目安
授乳において母乳を与えている場合は、一般的に産後6か月経過していて医師が許可を出せばピルの服用を再開できるとされています 。しかし前述のとおり、ピルを服用しながら母乳での授乳を行うと赤ちゃんにもピルの成分が行き渡ってしまう可能性があります。そのため、授乳が終わるまではピルの服用を控えておくことが推奨されています。
なお、自己判断でピルの服用を再開すると血栓症リスクが上がってしまう可能性もあるため、服用を再開したい場合は一度医師に相談しましょう。
母乳育児をしていない場合は産後21日以降が目安
授乳において母乳ではなく粉ミルクなどを与えている場合、母乳を使用することがないため、母乳育児している場合に比べて早期にピルの服用を再開できます。具体的には、 血栓症の危険因子がない場合は産後21日以降、危険因子がある場合は産後42日以降に服用を開始するとされています 。ここでいう危険因子とは、血栓症の既往や肥満、喫煙、帝王切開での出産などを指します。自分が当てはまるかどうかは、診察時にで医師に確認してもらいましょう。
なお、母乳育児をしていない場合でも、産後すぐは血栓症リスクが上がっていることに変わりはありませんので、服用再開を検討している場合は必ず一度医師に相談するようにしましょう。
1歳を過ぎても授乳を続けている場合
授乳の回数が1日1回程度に減っていても、母乳を通してピルの成分が赤ちゃんに移行する可能性は残ります。そのため、1歳を過ぎていても授乳を続けている場合は、ピルの使用はできません。
卒乳や断乳をしたあとであれば、産後の経過や血栓症の危険因子をふまえて、ピルを再開できるかどうかを医師が判断します。授乳の頻度や卒乳の予定を伝えると、より具体的な見通しを相談しやすくなります。
授乳中でも飲めるピルはあるのか
エストロゲンを含まないミニピルであれば、授乳中でも選択肢になる場合があります 。ただし自己判断で選べるものではなく、どのピルが向いているか、実際に処方するかは診察のなかで医師が判断します。種類ごとの考え方を見ていきましょう。
ミニピルは医師の判断で選択肢になる場合がある
ミニピル(POP)は、エストロゲン(卵胞ホルモン)を含まず、プロゲスチン(黄体ホルモン)だけを含むピルです。エストロゲンを含まないぶん血栓症のリスクが低いとされ、低用量ピルを飲めない方の避妊手段として使われています。国内で承認されているミニピルはスリンダ錠28で、添付文書には「治療上の有益性及び母乳栄養を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること」と記載されています。
つまり授乳中に必ず飲めるわけではなく、授乳を続けるかどうかも含めて医師と相談したうえで判断されます 。なお、ミニピルは不正出血が起こりやすい点や、低用量ピルと比べて避妊効果がわずかに劣る可能性がある点にも注意が必要です。
※参考:添付文書「スリンダ錠28」
生理日を移動したいときの中用量ピルは授乳中は控える
旅行やイベントに合わせて生理日を移動したい場合に使用されるのが、中用量ピルです。 中用量ピルはエストロゲンの含有量が低用量ピルより多く、血栓症や吐き気などのリスクも高くなるため、授乳中は服用を控えるのが基本です 。
なお、生理を早めたいときは前の生理の5日目までに、遅らせたいときは生理予定日の5〜7日前から中用量ピルを飲み始める必要があり、準備には時間がかかります。ずらしたい予定が決まっているときは、授乳の状況もあわせて早めに産婦人科で相談してみましょう。
妊娠前に治療目的でピルを服用していた場合は医師に相談する
妊娠前に子宮内膜症や月経困難症の治療としてピルを飲んでいた方も、授乳中は自己判断で再開せず、主治医に相談することが大切です 。治療に使うピルにもエストロゲン(卵胞ホルモン)を含むものがあり、授乳中は赤ちゃんへの影響を考えると妊娠前とは選択できる薬が変わってきます。
また、産後は症状の出方自体が変化することもあります。痛みや出血の量が気になるときは、現在の体を直接診てもらったうえで治療方針を決めていきましょう。オンラインでの診療では対応が難しいケースもあるため、気になる症状があるときは産婦人科を受診してみてくださいね。
授乳中の避妊はピル以外の方法から選ぶ
授乳中でピルを飲めない時期の避妊は、コンドームや子宮内避妊具(ミレーナなど)といったピル以外の方法から選択しましょう。 基本的に授乳中は排卵が止まるとされていますが、生理再開前に排卵が起きていることがあり、妊娠する可能性は十分にあるといえます 。産後にある程度の期間が経過し、性交渉を再開・試みる場合は、生理が再開していなくてもそれまでと同じく適切な方法で避妊を行う必要があります。ここでは、産後・授乳中も使用可能な避妊方法を解説します。
コンドーム
コンドームは、授乳中でもすぐに使える避妊方法です。産後の体の状態にかかわらず使えるうえ、性感染症を防ぐ効果も期待できます。 正しく使えていないと避妊の効果は下がるため、装着のタイミングやサイズを見直しておきましょう 。
子宮内避妊具(ミレーナなど)
子宮内避妊具は、子宮のなかに小さな器具を入れて避妊する方法で、一度入れると数年にわたって効果が続きます。 エストロゲンを使わないため、授乳中の避妊方法として検討されることがあります 。
産後に入れる場合は、子宮の回復を待つ必要があり、一般的には産後6週間以降が目安とされています。装着には産婦人科での処置が必要になるため、まずは受診して相談してみてくださいね。
授乳中の生理と生理痛との付き合い方
授乳中は生理が止まりやすく、再開する時期にも個人差があります。生理痛が気になるときの向き合い方とあわせて見ていきましょう。
授乳中に生理が止まる理由と再開の時期
授乳をしている期間は生理が止まるとされていますが、これは、母乳を作るために体内で分泌されるプロラクチンというホルモンが、排卵を抑制するためです。 一般的に授乳を終えてしばらくすると生理が再開しますが、これには個人差があり、授乳中に生理が再開する方もいます 。
また、出産前に悩んでいた生理不順や重い生理痛が、出産後の生理で解消されているという場合もあります。このように、産後の生理が始まる時期やその様子は人それぞれです。すぐに生理が再開しなくても心配せず、何か不安なことがあれば医師に相談してみましょう。
授乳中の生理痛はピル以外の方法で和らげる
授乳中に生理が再開して生理痛がつらいときは、ピル以外の方法で痛みを和らげる工夫から試してみるのがおすすめです 。おなかや腰を温める、締めつけの少ない服を選ぶ、横になれる時間をつくるといったセルフケアは、授乳中でも取り入れやすい方法です。
痛み止めを使いたいときは、薬によって授乳中に飲めるかどうかが異なるため、医師や薬剤師に確認してから使いましょう。痛みで動けない日が続いたり、経血の量が増えたりする場合は、産後の体の変化だけが原因とは限りません。気になる症状があるときは、我慢せずに産婦人科を受診してくださいね。
産後に控えたほうが良いこと
出産を迎えたあとの体は想像以上に大きな負担を受けておりデリケートな状態にあるため、ピルの服用以外にもしばらく控えておきたい行動が存在します。ここで産後に控えておきたいことを確認しておきましょう。
産後1か月は性交渉を控える
まず、出産を経て体はかなり傷ついているため、 産後1か月は性交渉を控えるようにしましょう 。この期間に性交渉を行ってしまうと、会陰部に痛みを感じたり、体外から雑菌が侵入し感染症にかかったりする可能性があります。
飲酒・喫煙は授乳を優先して控える
また、同様に飲酒や喫煙を再開するのも控えましょう。授乳中の場合、母乳を通して赤ちゃんに影響を与えることになります。 アルコールによって赤ちゃんが発育不全を起こす可能性があり、たばこにはさまざまな悪影響がありながらも特に乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスクが増大するため、どちらも授乳を優先して控えるようにしてください 。
まとめ
授乳中は、母乳を通した赤ちゃんへの影響、そして産後に高まる血栓症のリスクがあるため、低用量ピルの服用を控えることが基本です。再開できる時期の目安は、母乳育児をしている場合で産後6か月以降、母乳育児をしていない場合は産後21〜42日以降とされています。
授乳を続けている間は、赤ちゃんの年齢が1歳を過ぎていても考え方は同じです。授乳中はエストロゲン(卵胞ホルモン)を含まないミニピルが選択肢になることもありますが、自己判断せず産婦人科で医師に相談することが大切です。避妊が必要な際はコンドームや子宮内避妊具を検討し、体調に合わせたケアを行っていきましょう。
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授乳中のピルに関するよくある質問
ここでは、授乳中のピルに関するよくある質問について回答します。
授乳中にうっかりピルを飲んでしまったらどうしたら良い?
処方を受けた医療機関や産婦人科に連絡して指示を仰いでください。1回飲んだだけで赤ちゃんに強い影響が出ると決まっているわけではありませんが、自己判断で続けると母乳の量が減ることもあります。赤ちゃんの肌の色や飲み方でいつもと違うところが気になるときは、小児科にも相談してください。
授乳中でも妊娠することってあるの?
授乳中は排卵が止まりやすいとされていますが、生理が再開する前に排卵が起きていることもあり、妊娠する可能性はあります。「生理がきていないから大丈夫」と考えず、性交渉を再開するときはコンドームなどで避妊しましょう。
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監修者
2013年杏林大学医学部卒業後、慶應義塾大学病院で研修。 愛育病院、国立成育医療センターを経て、2018年より六本木レディースクリニックで不妊治療を行う。 現在は六本木レディースクリニック非常勤。
2024年よりメデリピルにてオンライン診療によるピル処方や、mederi magazineの記事監修を担当。
不定期で企業講演を行う。主に卵子凍結や、体外受精、治療に対する会社のサポートについて発信
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