生理は女性にとって健康状態のバロメーターでもあります。
生理の基礎知識や、生理中でも快適に過ごすためのセルフケアをご紹介。
ピルを飲むと排卵はどうなる?排卵しないしくみと体の変化を解説
「ピルを飲んでいるけれど、排卵はどうなるのかな…」と気になったことはありませんか?ピルには排卵を抑える働きがあり、正しく飲めている間は排卵が起こらない状態が保たれます。この記事では、ピルが排卵を止めるしくみや排卵しないことで体に起こる変化、飲み忘れたときに気をつけたいことまで紹介するので、不安を解消する参考にしてみてください。
もくじ
ピルを飲むと排卵が起こらなくなるしくみ
低用量ピルを正しく服用している間は、含まれるホルモンの働きによって脳からの排卵指令が抑えられ、卵巣からの排卵が起こらなくなります。まずは、排卵そのもののしくみから見ていきましょう。
排卵とは卵子が卵巣から飛び出すこと
女性の体では初経から閉経までの間、妊娠・出産の準備をするために卵胞期・排卵期・黄体期・生理期の4つのサイクルが繰り返されます。

卵胞期にエストロゲン(卵胞ホルモン)が増加することで、受精時に受精卵が着床しやすいように子宮内膜を厚くする働きをします。排卵期には、成熟した卵子が卵巣から飛び出し、黄体期になると子宮内膜が着床しやすいよう、ふかふかのベッドのような状態へ整えられます。排卵後に妊娠が成立しなかった場合には、厚くなった子宮内膜が剥がれ落ち、これが「生理」となります。

ピルが排卵を止める2つのホルモンの働き
ピルに含まれるエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲスチン(合成黄体ホルモン)には、脳から卵巣への指令をゆるやかにして排卵を止める働きがあります。体内でホルモンが十分満たされた状態が続くと、脳は卵胞を育てる指令を出さなくなり、排卵に至らない状態が保たれるのです。

さらに、子宮の入り口の粘液を変化させて精子の進入を防ぐほか、子宮内膜を薄い状態に維持する作用もあわせ持つため、正しく服用すれば高い避妊効果が期待できます。
排卵が止まるまでにかかる期間
ピルにより排卵が抑えられて避妊効果が期待できるまでの期間は、飲み始めるタイミングによって変化します。生理が始まって5日目までに飲み始めた場合は、当日から効果が期待できるとされています。生理6日目以降に飲み始めた場合は、7日間連続で飲んだあとに効果が期待できます。したがって、確実性を求めるなら実薬を7日間続けて飲んだあと、と考えておくと良いでしょう。いずれも、避妊効果は100%ではないこと、また性感染症は予防できないことから、コンドームの併用を推奨します。
排卵しないのに生理のような出血が来る理由
休薬期間に起こる出血は「消退出血」といい、排卵を伴う本来の生理とは別のものです。ピルを飲んでいる間は子宮内膜が薄い状態に保たれますが、休薬期間に入ってホルモンの供給が止まると、その内膜が剥がれ落ちて出血が起こります。
本来の生理や着床出血とは以下のような違いがあります。

排卵していないのに出血があると戸惑うかもしれませんが、周期的に消退出血があるのは、治療が進んでいる過程で起こりうる変化の1つです。出血が全く来ない場合(※)や、いつもと違う出血が続く場合は、医師に相談しましょう。
※最長120日間連続で服用できるタイプのピルを使用している場合、連続服用中は出血が来ないのが通常です。

ピル服用中に排卵日・排卵期はない
ピルを正しく服用している間は卵巣からの排卵が抑えられ、卵胞の発育自体が止まることでホルモンバランスが均一に保たれるため排卵日や排卵期といった時期は発生しません。ここでは、排卵が起こらないことによって体にどのような変化が現れるのかについて解説します。
基礎体温は低温期のまま二相性になりにくい
通常は排卵後にプロゲステロン(黄体ホルモン)が増えることで以下の図のように体温が上がりますが、ピルを服用中は排卵に伴うホルモンの変動が起こりにくいため、基礎体温が低温期と高温期の二相性に変化しにくくなります。

基礎体温から排卵日を読み取るのは難しくなりますが、体温が上がらないこと自体が不調のサインというわけではありません。妊娠を希望する場合は、ピルの服用ををやることで一般的には排卵が戻り、二相性に戻ります。
排卵期特有のおりものの変化は起こりにくい
ピルを服用している間は、排卵に向けてエストロゲン(卵胞ホルモン)が急増しないため、排卵期特有の透明でよく伸びるおりものが増えるといった変化が起こりにくくなります。
おりものの量が減ったと感じる方もいれば、変化を感じない方など個人差があります。ただし、においが強くなったり普段と違う色が続いたりする場合はピル以外の要因も考えられるため、産婦人科を受診してください。
排卵検査薬で排卵日は判断できない
排卵検査薬は尿中のLH(黄体形成ホルモン)を捉えるしくみですが、ピルの服用中は分泌が抑えられているため目安としての使用も困難です。
妊娠の不安がある際は排卵検査薬ではなく、性交渉から3週間ほど経過したあとに妊娠検査薬を使用して確認しましょう。判断に迷うときは、医師に相談しましょう。
ピルで排卵しないと起こる体の変化とメリット

ピルを服用して排卵が抑えられることで、生理痛や経血量の軽減が期待できるほか、生理周期が整うといった体の変化やメリットが期待できます。どのような変化が現れるのか、気になりやすいポイントについて詳しく順番に見ていきましょう。
生理痛や経血量が和らぐ
低用量ピルを服用して排卵が抑えられると、子宮内膜を厚くするプロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌が抑えられて剥がれ落ちる内膜の量が少なくなるため、生理痛や経血量の軽減が期待できます。
通常は着床しやすくするために女性ホルモンであるプロゲステロンの働きで子宮内膜が厚くなり、生理前から分泌されるプロスタグランジンが内膜を押し出すことで生理が起こります。低用量ピルの作用で剥がれ落ちる子宮内膜の量が減り、経血量が減少するため、生理痛の軽減も期待できます。
生理周期が整い予定を立てやすくなる
ピルを飲み続けると排卵に伴うホルモンの波が小さくなって周期が一定に保たれやすくなるため、休薬期間に合わせて出血の時期が決まり生理の予定を立てやすくなります。
そのため、旅行や試験といった大切な予定があるときも前もってスケジュールの調整がしやすくなるでしょう。もし大事な予定に合わせて飲み方を調整したい場合は、自己判断で休薬期間をずらさず産婦人科の医師に相談してみてくださいね。
卵巣がんや子宮体がんのリスク低下が報告されている
排卵のたびに卵巣の表面が傷ついて修復されることや子宮内膜が厚くなることが抑えられるため、排卵回数が減少するピルの服用によって卵巣がんや子宮体がんのリスク低下が報告されています。
ただし、この効果がすべての方に同じようにあてはまるわけではありません。がんを防止することを目的に処方される薬ではない点は理解しておきましょう。
排卵しなくても卵子の数は温存されない
卵子は排卵に至らなかったものを含めて年齢とともに減少していくため、ピルを服用して排卵を休んでいる間も卵子の数が減っていく流れそのものは止まりません。
「ピルを飲んでいれば将来のために卵子を温存できる」と考えられがちですが、ピルは卵子を残すことを目的とした薬ではありません。将来の妊娠について考えたいときは、自身の年齢や体の状態をふまえて産婦人科で医師に相談してみてください。
ピル服用中でも排卵が起こる可能性があるケース
ピルを服用していても、正しく服用できていないと、排卵が起こって妊娠につながる可能性があります。どのような場面で排卵が起こるリスクが高まるのかについて、具体的な原因や体調の変化、対処法を確認していきましょう。
飲み忘れや休薬期間の延長
ピルの飲み忘れや服用時間のずれ、休薬期間の延長などがあると体内のホルモン量が低下して、排卵が起こる可能性があります。実薬を2錠以上連続して飲み忘れた際や休薬期間が延びた場合は注意が必要です。飲み忘れによって排卵が起きた場合、数日後に片側の下腹部に痛みを感じることがあります。この痛みは強さや持続時間に個人差がありますが、この時点で避妊効果が低下している可能性を考慮しましょう。
嘔吐や下痢で成分が吸収されなかったとき
ピルを服用してから3時間以内に嘔吐や下痢があった場合は、成分が十分に吸収されていない可能性があるため、忘れた際と同様に排卵が起こる可能性があります。そのため、症状が出た際は追加で1錠服用する対応が必要です。
追加で飲んだことでシートの錠剤が足りなくなったときは、そのぶん1日早く休薬期間に入ります。消退出血の時期も1日早まると考えておきましょう。判断に迷うときは、処方を受けた医療機関に相談してください。
排卵が起こったときに感じることがある下腹部の痛み
飲み忘れなどで排卵が起こると、数日後に片側の下腹部にちくちくとした痛みを感じることがあります。ただし、ピル服用中の下腹部痛には、飲み始めの副作用や婦人科系の疾患など、ほかの原因が隠れている場合もあるため注意が必要です。
痛みが強いときや3日以上続く場合、発熱や出血を伴う際は自己判断せず産婦人科を受診しましょう。また、以下のような症状は血栓症の兆候の可能性もあるため、この場合も服用を中止してすぐに医師の診療を受けましょう。

妊娠が心配なときの確認方法
ピルの飲み忘れ後に性交渉があり妊娠が心配な場合は、正確な結果を得るために性交渉から3週間以上経過したタイミングで妊娠検査薬を使用して確認を行いましょう。
早すぎる検査では偽陰性(実際には妊娠しているのに陰性と出ること)と出るおそれがあるため、説明書をよく確認し、朝1回目の尿で検査することが推奨されています。
判定が難しい場合は、数日後に再度検査するか医療機関を受診してください。
ピルをやめたあと排卵が再開するまでの期間や妊娠を希望する場合の対応
排卵が戻る目安には個人差があるほか、妊娠を希望して服用をやめる際に知っておきたいポイントも存在します。それぞれ確認していきましょう。
排卵が戻るまでの目安と個人差
ピルの服用をやめると、体内へのホルモン供給が止まり、脳から卵巣への指令が再開するため、数週間から数か月のうちに排卵と生理の周期が戻っていきます。
ただし、排卵が戻るまでの期間には個人差があり、もともとの生理周期や体調の様子によっても変わります。服用をやめてから数か月が経過しても生理が来ないケースではピル以外の原因も考えられるため、気になる点があれば医師に相談しましょう。
妊娠を希望する場合に気をつけたいこと
妊娠を希望してピルをやめるときは、シートの途中でやめると不正出血が起こって生理周期が読みにくくなるおそれがあるため、1シート分を飲み終えてから休薬期間に入るのが基本です。
服用をやめる適切な時期や妊活の進め方について迷うときは、一人で抱え込まずに産婦人科で医師に相談してくださいね。
まとめ
低用量ピルには排卵を抑える働きがあり、正しく服用している間は排卵が起こらない状態が保たれます。そのため排卵日や排卵期という日にちは生まれず、基礎体温やおりものにも排卵に伴う変化は現れにくくなります。
また、ピルには排卵が止まることで剥がれ落ちる子宮内膜の量が減り、生理痛や経血量が和らぐほか、生理周期が整って予定が立てやすくなるといったメリットが期待できます。ただし、飲み忘れや服用時間のずれ、嘔吐・下痢があると排卵が起こることもあるため、正しく服用を継続することが大切です。
服用中に気になる症状が出た際や排卵に関する不安がある場合は、ひとりで悩まずに相談してみてくださいね。
ピルと排卵に関するよくある質問
ここでは、ピルと排卵に関するよくある質問に回答します。
ピルをやめたらすぐ排卵するの?
やめてから数週間から数か月のうちに排卵が再開することが多いとされていますが、戻るタイミングには個人差があります。すぐに再開する方もいれば、時間がかかる方もいるでしょう。数か月経っても生理が来ないときは、ほかの原因も考えられるため産婦人科を受診しましょう。
排卵を止め続けると将来妊娠しにくくなるの?
ピルの服用そのものが将来の妊娠しやすさを下げるとは報告されていません。服用をやめれば、排卵と生理の周期は戻っていきます。ただし、年齢を重ねることによる体の変化は、ピルを飲んでいてもいなくても起こります。妊娠を考えるタイミングについては、医師に相談しながら決めていきましょう。
ピルを飲んでいるのに排卵痛みたいな痛みがあるのはなぜ?
飲み忘れによって実際に排卵が起こっているほか、飲み始めの副作用や婦人科系の疾患など、いくつかの原因が考えられます。痛みが強いときや長く続くとき、発熱や出血を伴うときは、自己判断せず産婦人科を受診してください。
ミニピルでも排卵は止まるの?
ミニピルはプロゲスチン(合成黄体ホルモン)のみを含む薬で、排卵を完全に抑制しない場合もあります。低用量ピルと比べて避妊効果がわずかに劣る可能性や、不正出血が起こりやすい点にも気をつけたいところです。どのピルが合うかは、体の状態や希望をふまえて医師が診療のうえ判断します。
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監修者
日本医科大学武蔵小杉病院 助教
2015年日本医科大学医学部卒業後、2年間の初期研修を経て、2017年より日本医科大学産婦人科学教室に入局。
大学病院、市中病院、クリニックなど幅広く勤務を経験。
日本女性医学会、日本生殖医学会、日本周産期・新生児学会に所属し、日々最新の知識を習得し、現在は日本医科大学武蔵小杉病院にて助教を務める。
2026年1月に医学博士取得。
2024年にメデリピルにてオンライン診療によるピル処方を開始し、2025年からmederi magazineの記事監修を担当。
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