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ピルによる血栓症の確率は?症状、原因、予防方法について
血栓症は人を問わず発症リスクがある疾患であり、低用量ピルの服用や生活習慣などによって発症リスクが増加します。この記事では、低用量ピルの服用によって血栓症のリスクが上がる理由と発症率の比較、初期症状と予防法について具体的に解説します。
もくじ
ピルの副作用にある”血栓症”とは?
血栓症とは、血管内に血栓ができることで血管が詰まってしまう病気です。血栓によって循環が妨げられた部位は機能停止又は低下を引き起こします。血栓ができる血管によって動脈血栓症、静脈血栓症に分類されることが特徴です。動脈血栓症には心筋梗塞や脳梗塞、静脈血栓症にはエコノミークラス症候群などの種類があります。
血栓症の初期症状・前兆
血栓が形成されている状況では局所での血液供給が滞り、初期症状として各部位の痛みやしびれなどが起きることがあります。具体的な初期症状は以下の通りです。
・激しい腹痛
・激しい胸痛、息苦しい、押しつぶされるような痛み
・激しい頭痛、めまい
・見えにくい所がある、視野が狭い、舌のもつれ、失神、けいれん、意識障害
・ふくらはぎの痛み・むくみ、握ると痛い、赤くなっている
・手足の脱力、手足のまひ
また、症状が進行すると以下のような状態になります。
・体組織が壊死する
・皮膚が茶色く変色する
・当該部位が崩れて潰瘍になる
・最悪の場合死亡する
海外の研究結果によると、低用量ピルによる血栓症リスクの増加は使用開始後4か月以内に生じることが認められており、服用中止後3か月以内に非服用時と同等の水準まで発症リスクが戻ることが報告されています。
血栓症の症状が現れた場合はすぐにピルの服用を中止し、血栓症の診断もしくは治療に対応した医療機関を受診してください。
低用量ピルが血栓症のリスクを上げる理由とは?
低用量ピルの稀な副作用として血栓症のリスク増加があります。
日本産科婦人科学会の「低用量経口避妊薬の使用に関するガイドライン(第2版)」によると、低用量ピルに含まれる成分には体内の血栓性素因を顕在化させる作用があるとされています。血栓性素因とは血栓が生じやすくなる体質的な要因で、先天性と後天性に分類されます。
低用量ピルは、エストロゲンとプロゲステロンという2つの女性ホルモンを主成分とします。特にエストロゲンには、心血管保護作用があると同時に、凝固亢進作用があります。つまり、血栓が形成されるリスクが高まります。一方で、プロゲステロンには、相反する作用があります。そこでエストロゲンの含有量を低用量化するなどの改良がなされてきました。
先天的な素因を保有する人は、原則低用量ピルの服用ができません。気になる方は産婦人科などに相談してみましょう。
低用量ピルによって血栓症を発症する確率は?
低用量ピルには静脈血栓症の発症リスクを増加させる副作用がありますが、低用量ピルの服用によって血栓症を発症する確率は非常に低いと考えられています。
【女性10,000人あたりの年間の血栓症発症者数】
属性 | 発症者数 |
ピル非服用の女性 | 1~5人 |
ピル服用の女性 | 3~9人 |
妊婦 | 5~20人 |
分娩後12週の女性 | 40~65人 |
参照:低用量経口避妊薬、低用量エストロゲン・プロゲストーゲン配合薬ガイドライン2020
低用量ピル使用中の死亡率は年間1/100,000以下とされており、適切な治療によって対応できる症例がほとんどであると考えられています。血栓症の治療は血管外科、循環器内科、脳神経外科などに相談することが一般的です。
低用量ピルによる血栓症のリスクが高い人
以下の特徴に当てはまる人は血栓症のリスクが高くなるので要注意です。
●35歳以上の喫煙者(1日15本以上)
●40歳以上である
●血栓症の既往歴がある
●第1度近親者に血栓症の家族歴がある
●肥満(BMI30以上)
●前兆を伴う片頭痛がある
●高血圧脂質異常症、糖尿病など生活習慣病の患者
●心臓弁膜症の患者
●血栓性素因がある
●長時間の不動(デスクワーク、入院、飛行機移動など)
●妊娠中もしくは分娩後
血栓症のリスクが上がる要因は「血流の停滞、血管内皮障害、血液凝固能の亢進」が3大要因になっています。飛行機移動や入院治療など長時間動かない環境下で血流が停滞したり、喫煙や生活習慣病などがあったり、服薬や先天性の要因などで血液凝固作用が亢進すると血栓症のリスクは高まります。
また、喫煙や高血圧も心筋梗塞、脳卒中のリスク増加につながる要素です。1日15本以上喫煙するときに心筋梗塞のリスクは最大化するとされており、禁煙した場合には1年~5年以内に心血管疾患リスクが減少することが判明しています。次に、収縮期血圧160mmHg以上あるいは拡張期血圧100mmHg以上である場合には脳卒中のリスクが増加することから低用量ピルの投与は禁忌とされています。
血栓症を発症しやすいタイミング
ピルの服用開始から3〜4か月経過するまでの間は、血栓症を発症しやすいとされています。また、一度ピルの服用を中止してその後服用を再開した場合も、服用を始めたばかりの状態と同じになるため、血栓症を発症リスクが高まると言われています。
ピルの副作用をおさらい
ピルとは、卵胞ホルモンである「エストロゲン」と黄体ホルモンである「プロゲステロン」の2種類の女性ホルモンから作られた錠剤のことです。ピルを服用することによって体内のホルモンバランスを整えることができ、避妊や生理痛軽減などの効果が得られます。しかし副作用として、血栓症のリスク向上・むくみ・頭痛・気分の落ち込み・不正出血・乳房の張りなどがあります。これらの副作用はピル服用開始直後によく見られますが、通常の場合、服用開始から数か月経過すると次第におさまることが多いです。
また、服用しているピルが自分に合っていなかったりすることが原因で副作用が生じることもあります。ピルの服用開始から数か月経っても副作用がおさまらない場合、一度医師に相談するようにしてください。
ピルの服用が禁忌な場合・慎重な判断が必要な場合
ピルは、実は誰でも服用できるというわけではありません。
以下の条件に当てはまる方は、健康上のリスク回避のためピルの服用が禁忌とされています。
・年齢が50歳以上、もしくは閉経後の方
・35歳以上で1日15本以上の喫煙者
・血栓症になったことがある方
・これまで乳がんや子宮体がんになったことがある
・現在妊娠中/妊娠している可能性がある/授乳中
・これまで妊娠中に「黄疸」「ヘルペス」「持続性掻痒症」と診断されたことがある
・ミレーナ(子宮内に挿入する避妊リング)を挿入している
・最終の生理が3か月以上前である
・前兆のある偏頭痛が起きる
・手術前4週以内、術後2週以内、産後4週以内及び長期間安静状態の患者の方(45分以上の手術)
・血栓性静脈炎、肺塞栓症、脳血管障害、冠動脈疾患又はその既往歴のある患者の方
・抗リン脂質抗体症候群、血栓性素因があると診断されたことがある方
また以下の条件に当てはまる方は、服用を禁止されているわけではありませんが、健康上のリスクが高いため服用にあたっては慎重な判断が必要とされています。
・年齢が40〜45歳
・BMIが30以上
・タバコを吸う習慣がある
・家族が乳がんになったことがある
・自身が子宮頸がんや子宮頸部異形成になったことがある
血栓症の検査・診断方法
血栓症が疑われる際には、まず問診や触診を行った後、CTや超音波を用いた検査が行われます。その後、血管造影検査によって診断結果を確定します。また診断においては血液検査も行われ、血栓が分解される際に生み出される「Dダイマー」という物質の量を測定時に血液中に血栓が存在しているかの参考にします。
血栓症の治療方法
血栓症の治療方法は、薬物療法・理学療法・カテーテル療法・外科療法の4つに分けられます。血栓ができた場所や血栓の大きさによって治療が選択されます。まず、薬物療法においては、血栓を溶かす血栓溶解薬や血液が固まらないようにする抗凝固薬が用いられます。理学療法では、足に圧をかける「弾性ストッキング」というものを装着してもらい、足の自主的なポンプ機能を向上させて血液循環を促します。カテーテル療法では、血管内にカテーテルという器具を入れ、そこで血栓溶解薬を注入したりそのまま血栓を吸引したりします。それでもなお改善しない場合は、外科療法として手術を行って血栓を取り除きます。
低用量ピルによる血栓症の予防方法はある?
血栓症の発症リスク低下を図るためには、適度な運動、水分補給や食習慣の調整などが予防法として効果が見込めます。いつ、どういった形で対策を行うべきかについてご紹介します。
1日30分以上の運動をする
1日30分以上の適度な有酸素運動には、内臓脂肪の減少や基礎代謝向上といった効果があり、生活習慣病による血栓症のリスクの予防効果が期待できます。なお、長距離移動や入院などで動き回ることが困難である場合、2~3時間に1回程度は足首の曲げ伸ばし、ふくらはぎのマッサージなどを行いましょう。
水分をこまめに十分な量を摂る
低用量ピルに含まれる女性ホルモンには血液凝固作用を高める働きがあり、服用期間中は血栓症のリスクが増加しています。血栓症のリスク増加を抑えるには、こまめな水分補給によって血流の停滞を防ぐことが重要になります。目安としては寝起きや就寝前、入浴前など発汗量が増えるタイミングで水分補給を行うことが水分不足の予防につながります。
血栓症のリスクが少ないピルはある?
同じピルであっても、種類や製品によって配合されているホルモンや成分の量が異なるので、血栓症の発症リスクは全て同じとは言えません。ピルに配合されるエストロゲンの量によって血栓リスクが低下するため、低用量ピルよりも超低用量ピルの方が血栓リスクが低いとされています。さらにエストロゲンが含まれていないミニピルは血栓リスク上昇がありません。40歳以上の方や、禁忌事項に当てはまって低用量ピルが服用できなかった人も処方を受けられる可能性があるというメリットもあります。しかし、低用量ピルに比べ不正出血が起こりやすいため、注意が必要です。
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ピルを長く続けるほど血栓症が起こりやすくなる?
血栓症の発症リスクが高まるのは、ピルを服用開始してから2〜3か月経つまでの間です。この期間は、ピル服用によるほかの副作用が生じやすい時期とも重なっています。その期間を超えて長期的に服用した場合、血栓症のリスクは低下していきます。ただ、一度ピルの服用を中止しその後再開した場合、最初と同じように血栓症のリスクは高まりますので、妊娠の希望などがない場合は、継続して服用することをおすすめします。
血栓症になってしまった場合の対応方法
血栓症が疑われる症状が見られた場合は、重症化する前にすぐに病院を受診するようにしましょう。血栓症の治療においては、血栓を溶かす薬や血栓が固まるのを防ぐ薬を用いた投薬治療を行うことが多いです。それ以外では、カテーテル手術や外科手術によって血栓を取り除く場合もあります。
低用量ピルによる血栓症の不安がある方は医師に相談を
低用量ピルには血栓症のリスクをわずかに上げる副作用がありますが、発症率が低い病気のひとつです。ただし、血栓症の既往歴がある・喫煙習慣や生活習慣病があるなど、血栓症を発症しやすい場合には低用量ピルの服用に注意が必要です。疑問や不安がある場合は産婦人科へ相談し、正しく使いましょう。
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まとめ
今回の記事では、ピルと血栓症の関係性について解説しました。ピルを飲むと血栓症の発症リスクが多少上がるとされていますが、その可能性は低いものであり過度に心配する必要はありません。もしそれでも血栓症の疑いのある症状が出た場合には、すぐに病院に行って医師に相談し、適切な治療を受けるようにしましょう。
監修者
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