生理痛がひどいのはなぜ?原因と痛みを和らげる対処法を解説

生理
更新日:2024.10.29
生理痛がひどいのはなぜ?原因と痛みを和らげる対処法を解説

毎月の生理痛が原因で、体も心も辛くなってしまう方は多くいらっしゃると思います。この生理痛について、痛みが起きるメカニズムや症状を和らげる方法をご存知でしょうか?今回の記事では、そんな生理痛のあれこれについて解説していきます。生理痛について正しく理解することで、毎月の悩みとより上手に付き合っていけるようにしましょう。

生理痛とは?なぜ起こるの?

そもそも生理痛とはどのようなものなのでしょうか?

生理痛とは生理前〜生理中にかけて子宮が収縮することによって起こる腹痛や腰痛をはじめとした身体の不調を指します。
症状として、頭痛や胃痛、吐き気、めまい、腸蠕動痛(ちょうぜんどうつう)、下痢などが発生することもあります。
子宮内膜から排出されるプロスタグランジンという物質が子宮をはじめとした身体の臓器の平滑筋という筋肉を収縮させることによって生理痛により身体の不調が起きます。そして、このプロスタグランジンが分泌されることによって子宮が収縮し、子宮の内膜組織が排出されて生理が起きています。
月経痛は様々な原因によって、生活に支障をきたすほど酷くなってしまうことがあります。

生理痛が起こるメカニズム

前章にて簡単に解説しましたが、生理痛は生理が起こる自然なメカニズムの中で引き起こされる症状です。

排卵と共に子宮の内膜は受精卵の着床に備えて徐々に分厚くなっていきます。おおよそ1ヶ月の周期で妊娠が成立しないと、次の排卵のために不要になった内膜を身体の外に排出します。この時、不要になった子宮の内膜を外に排出するためにプロスタグランジンという物質を分泌します。そのプロスタグランジンが子宮を収縮させて経血を排出します。

子宮が収縮することにより生じる痛みが生理痛です。
プロスタグランジンが過剰に分泌されたり、プロスタグランジンの感受性が高いと、子宮やそのほかの臓器が激しく収縮するため生理痛が重くなります。

生理(月経)周期と女性の身体機能の関係

女性には子宮、卵管、卵巣といった妊娠や出産を行うための女性特有の臓器があります。またこれらの女性特有の臓器の成長と生理は女性ホルモンの働きによって起こります。例えば、初潮や閉経は女性ホルモンによって起こります。生理は、エストロゲンとプロゲステロンという二つの女性ホルモンの働きによって25〜38日周期のサイクルで起こります。

生理(月経)のメカニズム

エストロゲンとプロゲステロンという二つの女性ホルモンがどのように作用して生理が起こるのか解説していきます。

まずはじめに、エストロゲンが働くことで卵巣の中で卵胞が成長し排卵が可能になります。その後、脳から出る黄体形成ホルモンが卵巣に働き排卵がおこります。

排卵が終了すると、プロゲステロンが働き子宮内膜を分厚くすることで着床しやすい子宮の状態に整えます。

分厚くなった子宮内膜に着床が起きると妊娠が成立しますが、着床が起きなかった場合は子宮内膜からプロスタグランジンが出てきます。プロゲステロンによって分厚くなった内膜組織をプロスタグランジンによって体外に排出することで生理が起きます。分厚くなった内膜組織を体外に排出する際に起きる痛みや不調が生理痛です。

お腹が痛いだけじゃない?生理痛の様々な症状

生理痛と聞くとお腹の痛みを想像しやすいですが、それ以外にも生理の時には様々な部位で症状があらわれることがあります。以下で、生理時にみられやすい症状についてそれぞれ解説していきます。

腹痛・胃痛

生理痛と聞いてイメージするのは、やはり腹痛だと思います。この腹痛は、生理時に分泌されるプロスタグランジンという物質によって生じています。プロスタグランジンは、経血を体外に排出するために子宮を収縮させる作用をもっており、過剰に分泌されると子宮が位置する下腹部に痛みが生じてしまうのです。また、このプロスタグランジンは子宮以外に胃も収縮させるため、生理の際には胃痛を感じることもあります。

腰痛

生理中に腰痛に悩まされる方も多いのではないでしょうか。実はこの腰痛も、先ほど紹介したプロスタグランジンという物質が関係しています。プロスタグランジンの受容体(=プロスタグランジンを受け取る場所のこと)は子宮以外にも存在し、体内の様々な部位で痛みが増強されるため、結果的に腰痛が生じるとされています。

頭痛・吐き気・めまい・下痢

生理中に頭痛・吐き気・めまい・下痢などが起きることもあると思います。
生理前〜生理中にかけて見られる頭痛は「月経関連片頭痛」と呼ばれることもあります。詳しい原因はわかっていない部分もありますが、エストロゲンというホルモンの急激な分泌量低下や、そのほかのホルモンバランスの変化によって、頭痛が生じているとされています。

吐き気は、胃痛によって生じる胃の不快感が原因だと考えられます。

めまいは、生理中に自律神経の働きがうまくいかず起立性調節障害を起こしやすくなったり、経血が体外に排出されて貧血状態になったりすることが原因だとされています。

下痢は、子宮を収縮させる物質であるプロスタグランジンが腸を収縮させることで生じると考えられています。

生理痛がひどい!その原因とは?

日常生活に影響が出ている生理痛は月経困難症と呼ばれます。下腹部の強い痛みのみならず頭痛、胃痛、吐き気、めまい、下痢などを伴う場合も月経困難症に当たります。
また、月経困難症には明確な原因がない機能性月経困難症と、明確な原因疾患による器質性月経困難症という二つのタイプがあります。

機能性月経困難症は、プロスタグランジンの分泌量が過剰であったり感受性が高い方で起こると考えられています。思春期女性の月経困難症の多くは機能性月経困難症に当てはまり、出産を経験すると改善することもあります。
また、ストレス、栄養不良(偏った食事)、飲酒、喫煙などで悪化するともいわれています。

器質性月経困難症は、子宮内膜症や子宮筋腫など明確な女性特有の生殖器官に疾患が原因となって引き起こされます。器質性月経困難症の場合は原因となっている疾患の治療がとても重要です。

原因①:子宮内膜症

子宮内膜症は、子宮内膜に似た組織が子宮の外にできてしまう疾患です。子宮の外にできた内膜が月経困難症の原因となることがあります。子宮内膜症が原因で、子宮の外にできた内膜は、子宮内の内膜と同じく生理周期に合わせて成長していき、生理周期の終わりに生理の経血として剥がれ落ちるため、子宮外にある内膜も出血や痛みを引き起こす可能性があります。

子宮内膜症による月経困難症は、子宮外の内膜が傷跡のようになってしまうことで、月経血による炎症や癒着(他の臓器とくっついてしまうこと)が原因となっています。また、はがれた内膜が腸や膀胱などの近くに広がってしまうことで、排尿や排便に影響を与えたり、下腹部痛や性交時の痛みを引き起こすこともあります。

原因②:子宮筋腫

子宮筋腫は、子宮筋層にできる良性の腫瘍(筋肉のかたまり)です。子宮筋腫の大きさや位置によって、月経困難症を引き起こすことがあります。

生理周期の際には、出血が多くなり、長く続くことがあります。子宮筋腫は、体内のエストロゲン量が多い場合に発症しやすく、閉経後に自然に小さくなることもありますが、サイズが大きい場合や症状が強い場合、不妊症の原因になっている場合には、ホルモン療法や手術による治療が必要になることがあります。

原因③:子宮腺筋症

子宮腺筋症は、子宮内膜に似た組織が、子宮の筋肉のなかにできる病気です。子宮の筋肉の中にできた組織が生理周期の際に出血をおこし、子宮の筋肉が厚くなることが原因で、月経困難症を引き起こします。
生理周期の際には、出血が多くなり、痛みも強くなることがあります。治療法には、低用量ピルなどのホルモン療法や手術療法があります。

生理痛を和らげるための対処法

生理痛は仕方がない、我慢すれば数日すればよくなる、と辛い生理痛を我慢していませんか?
生理痛は我慢せず、コントロールして自分に合った付き合い方をすることで軽減することができるかもしれません。

対処法①:体を冷やさない

生理中は、体を冷やさないようにすることが重要です。体が冷えると血行が悪くなってしまいます。また、血行不良によって経血が排出しづらくなった状態を解決しようとしてプロスタグランジンが過剰に分泌されてしまい、痛みが強まる原因となります。

体を温める上では、カイロや湯たんぽを使う、湯船にゆっくり浸かる、生姜・白湯・スープなどの体が温まる飲食物を摂取する、などの方法がおすすめです。ほかにも、軽い運動やストレッチは体を温め血行を促進するだけでなく、気分をリフレッシュすることにもつながるため、無理のない範囲で体を動かせるように意識してみるのも良いでしょう。

対処法②:心のケアをする

生理中は、どうしても気分が沈んでしまいがちですよね。イライラしたり、心が不安定になったり、なかなか眠れなかったりといった悩みは、多くの方が抱いていると思います。そのような時は、自分の好きな香りのアロマを部屋に焚いたり、良い匂いの入浴剤を入れた湯船にゆっくり浸かったりしてみましょう。生理中はホルモンの影響で心のバランスが崩れやすいため、普段以上に自分を労ってあげてくださいね。

対処法③:食べ物を工夫する

生理中に冷たいジュースやアイス、きゅうりやトマトなどを食べると、体が冷える原因となってしまうため注意が必要です。生理中の食事に意識的に取り入れたい食べ物としては、以下のようなものがあります。

<マグネシウムを含んでいる食べ物>
ナッツ類・海藻類・ほうれん草・さつまいもなど
→子宮の収縮を促進するカルシウムの働きを抑えることができます。

<体を温める作用がある食べ物>
生姜・にんにく・玉ねぎ・長ネギなど
→体が温まることで血行が良くなります。

<鉄分を含んでいる食べ物>
レバー・赤身肉・ほうれん草・プルーンなど
→生理中の貧血を改善することができます。

<大豆イソフラボンを含んでいる食べ物>
おから・豆腐・油揚げ・豆乳など
→女性ホルモンのエストロゲンと似た働きをし、エストロゲン不足を防ぐ効果があります。

<EPAやDHAなどの脂肪酸を含んでいる食べ物>
ブリ・サンマ・イワシなどの青魚
→血行を良くする作用があると言われています。

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対処法④:鎮痛薬を飲む

痛みがひどい場合には、鎮痛薬を飲むのも一つの手です。ずっと痛みを我慢していると、作業に集中できなくなってしまったり、何か原因の病気が隠れていた場合に気付けなくなってしまったりする可能性があります。鎮痛薬を飲む場合は、痛みが出る前や、痛みが出てからすぐのタイミングで飲んだ方が効果を得られます。

対処法⑤:体勢を変える・体を動かす

生理痛が辛い時には、体勢を少し変えて見るのがおすすめです。まず椅子に座っている時は、下腹部に負担をかけないために、浅めに腰掛けて骨盤を立てるように意識してみましょう。また、デスクワークなどでずっと同じ姿勢を続けていると血行が悪くなってしまうため、時々少し体を動かすようにするのがおすすめです。寝る時は、横向きになり膝を曲げて足の間に枕などを挟むと、下腹部への負担を減らし楽な状態を保つことができます。ほかにも、軽いストレッチなどを行って体を動かしてみるのも効果的です。

対処法⑥:婦人科へ行く

生理痛がひどく、日常生活にまで支障が出ているような場合は、月経困難症の可能性があります。月経困難症の原因として、子宮内膜症や子宮筋腫などの病気が潜んでいることもあり、そのまま治療をせずに放置していると将来不妊につながってしまう可能性もあります。痛みが辛い場合は、我慢せず婦人科・産婦人科を受診するようにしてください。

対処法⑦:低用量ピル・超低用量ピルを服用する

低用量ピルとは経口避妊薬といわれるお薬で、プロゲステロンとエストロゲンの成分を合わせてできた錠剤です。1日1回服用することで排卵を抑制して、プロスタグランジンの産生や子宮内膜の増殖を抑えることができ、適切な服用を行えば99.7%の避妊効果があります。
また、低用量ピルを服用することで排卵が抑制され排卵痛の軽減、月経出血量の減少、生理痛の軽減にも効果があります。PMS(月経前症候群)、ニキビなどの肌荒れ、生理不順、子宮内膜症の改善にも効果を発揮します。
超低用量ピルは、子宮内膜症や月経困難症などの治療で用いられるピルです。辛い生理痛の原因がこれらの病気であった場合は、超低用量ピルを服用して治療を行う場合があります。どちらも処方には医師の診断が必要ですので、症状が気になる場合は一度病院を受診してみましょう。

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この痛みって普通?生理痛などの症状をセルフチェック

生理中のさまざまな症状に悩まされているけど、婦人科へ受診するタイミングがわからない…なんて方は、下記の項目に当てはまるものがないか確認してみてください。
どれか1つでも当てはまるものがあれば、婦人科への受診をおすすめします。

□経血量が多く、夜用ナプキンが2時間もたない
□レバー状の血の塊がでる
□生理期間以外にも、下腹部痛や腰痛がある
□生理中は必ず痛み止め(鎮痛剤)を使用する
□生理中は食欲がない
□3か月前と比べて、明らかに生理が重くなっている
□頭痛や吐き気、ぼーっとしてしまうことがある
□悪寒や発熱の症状が毎回起きる
□排便やセックスの時に痛みを感じる
□おなかを触るとしこりを感じる
□生理期間以外にも息切れや動悸を感じる
□貧血気味になる
□妊活してるにもかかわらず、なかなか妊娠しない

婦人科に行く機会がない方は、なかなか行きづらさを感じると思いますが、この機会にご自身に合った婦人科や医師を見つけておくと、今後も何かあった際に相談しやすい環境を作ることができます。

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まとめ

生理痛は女性の身体の自然なメカニズムで起きる症状です。毎月の生理が辛いと、前後の期間もブルーな気持ちになりますよね。

生理痛の悩みは決して自分1人で抱え込まずに、産婦人科に相談したり、低用量ピルを一つの選択肢として検討してみるのをおすすめします。
1日でも早く生理痛の悩みから解放されるように、できることからはじめてみましょう。

監修者

産婦人科専門医、がん治療認定医、mederiドクター
mederiドクター
産婦人科専門医、がん治療認定医 女性のヘルスケアアドバイザー(女性医学会認定)、F U S E certificated personnel(米国内視鏡外科学会認定)、JOHBOC研修終了(日本遺伝性乳癌卵巣癌総合診療制度機構) 大学病院に入局し高度周産期センター、婦人科腫瘍専門施設で研修・修練後、総合病院で良性疾患の腹腔鏡手術や、不妊治療、女性内分泌・更年期障害など幅広く女性診療を行う。米国への留学を経て、現在はmederiドクターとして、メデリピルのオンライン診療や体調相談を担当している現役産婦人科医。

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