生理は女性にとって健康状態のバロメーターでもあります。
生理の基礎知識や、生理中でも快適に過ごすためのセルフケアをご紹介。
生理ケアは、女性にとって必須のライフスキル。まずは自分の生理状態を知ることから。
産婦人科医 柴田綾子先生
= PROFILE =
世界遺産15カ国ほど旅行した経験から、母子保健に関心を持ち産婦人科医となる。 2011年、群馬大学を卒業後に沖縄での初期研修を経て、2013年より淀川キリスト教病院に所属。女性の健康に関する本やセミナーを通して一般に向けた発信も積極的に行う。 著書:「患者さんの悩みにズバリ回答!女性診療エッセンス100」(日本医事新報社)、「明日からできる! ウィメンズヘルスケア マスト&ミニマム」(診断と治療社)など。
Q.「低用量ピルで生理ケアの日」にご賛同いただいたお考え・お気持ちを教えてください
ヨーロッパやアメリカにおいて、低用量ピルを含めたホルモンによる生理ケアを行っている女性は、約3割程度と言われています。一方で日本女性の低用量ピルの服用率は低く、年々増えてはいるものの、約9%前後と言われています。加えて、そもそも日本の義務教育では、生理や避妊の知識だけでなく、低用量ピルの効果や活用方法を学ぶ機会がまだまだ少ない状況です。
このような記念日制定とその啓蒙活動を通して、一人でも多くの方にとって、低用量ピルやその効果を知るきっかけになるといいなと思い、賛同しました。
Q.日本は海外と比べて、どうして低用量ピルの服用率が低いのでしょうか?
理由は3つあると思います。
まずは価格の問題です。海外の場合、低用量ピルを生活必需品として捉えていて、思春期など若年の女性向けに無料配布する制度がある国や、経済的に困窮されている層の女性には安価に提供している国もある中で、日本ではそのようなサポートがありません。
次に、産婦人科を受診することの心理的ハードルの高さです。日本では、まだ「産婦人科は妊娠したら行くところだ」というイメージが強く、生理の相談で気軽に受診できる場所になっていないのが現状です。この点は、近年、オンライン診療や産婦人科以外での処方も可能となったことで、少しずつ改善されてきている印象です。
最後は、低用量ピルそのものへの知識の問題です。「副作用が怖い」という思い込みや、正しい効果・効能を知らない方が多いと思います。
Q.生理ケアの重要性について教えてください
生理ケアは、女性にとって必須の“ライフスキル”です。 生理について「なんとなく恥ずかしいことだから人前で話してはいけない」と躊躇しがちですが、もっと気軽に女性同士で情報交換したり、話題にすることで、生理期間を快適に過ごすヒントがもらえると思います。さらに、パートナーや職場にも、堂々と生理で困っていることや要望をシェアできる環境だと良いですよね。
「生理ケアって何から始めればいいの?」という方は、まずは自分の生理の状態やパターンを知ることから始めましょう。手帳やアプリなどを活用して、生理期間の体調や気分、経血量を記録することで、「生理の初日の痛みが強い」「ナプキンが1時間もたないほど経血量が多い」などの傾向が見えてきます。そして、生理や生理にまつわる心身のトラブルは、個人差が大きいので、友人や周囲の女性たちと比べて自己判断せずに、気軽に産婦人科医に相談してくださいね。
<全国の小中学校向け性教育の出張授業『mederi for school』での様子。左:産婦人科医 柴田綾子先生、右:mederi株式会社 代表取締役 坂梨亜里咲>
Q.特にどんな方に低用量ピルを活用してほしいですか?
生理の症状で困ったことがある女性には、ぜひ一度活用してほしいです。産婦人科医として外来での診療を行う中で、生理の悩みを抱えるたくさんの女性たちと出会います。
例えば学生さんの中には、痛み止めが効かず、学校や部活を休まざるを得ないほど症状が重い方がいらっしゃいます。 保護者同伴で産婦人科を受診すると、親が低用量ピルを使わないと決めてしまうことがあるのですが、どんな人でも「自分の体のことは自分で決める権利(リプロダクティブ・ライツ)」を持っていることを忘れずにいてほしいです。また、毎日はピルを飲んでいなくても、生理日の移動を目的に低用量ピルの服用を検討される女性も多いです。試験や旅行などの大切な予定と生理が重なるのを避けて、「しっかり試験で本領を発揮したい」「レジャーを思いきり楽しみたい」といったニーズに合わせて使えることも知ってほしいですね。
妊活を始める前の女性で、生理痛がひどいことから子宮内膜症を患っていることに気づき、治療上で低用量ピルを使用される方もいますね。それから、生理の経血量が多くショーツを汚してしまったり、洋服にまで経血が染みて外出先で慌てた経験があるという方も、低用量ピルで経血量を減らすことができます。避妊や生理痛のコントロール以外にも低用量ピルは活用できるので、ぜひ産婦人科へ相談してください。
Q.生理ケアや低用量ピルに関する今後の医療や社会の進展について、どのように期待されますか?
低用量ピルを押し付けるつもりはありませんが、女性だけでなく男性も含め、すべての人が生理ケアを理解し、選択肢のひとつとして低用量ピルの存在を知っている状態となることが理想です。
私は産婦人科医歴10年になり、20〜30代の女性比率が高い職場で過ごしていますが、医療業界においてもここ数年で女性が働きやすい環境が整ってきていると感じています。しかし、社会や企業によるサポートという面においては、まだ妊娠・育児中の女性を対象とした取り組みが中心になっているのが課題です。妊娠・出産を望まない、選択しない女性も尊重され、女性全体を対象とした生理ケアやサポートのあり方が広がることを期待しています。
もしかすると世の中には「低用量ピルが避妊効果を持つ医薬品なので、少子化に悪影響を及ぼす」と捉える方もいるかもしれませんが、それは間違いです。まずは、女性自身が「産みたい」と思える社会環境をしっかり整えることが、生まれてくる子どもにとっても大事です。その上で、女性自身が望むタイミングでの妊娠・出産を叶えるために、低用量ピルを活用するという考え方が重要だと思います。
Q.このインタビューを読む女性へ、メッセージやアドバイスがあれば教えてください
私は、学生時代の海外旅行の経験から日本と世界の医療の違いに気づきました。日本の医療には、医師から患者への一方通行のコミュニケーションスタイルが強く残っているので、患者さんが思っていることや感じたことを医師に伝えにくい雰囲気があると思います。また、性教育も不足していて、圧倒的な知識不足のまま社会に出て大人として生きていかねばならないので、女性にとって非常に厳しい状態だと思います。でも、女性が自分の体や生理をケアする力は、生きていくうえで必須のスキルです。産婦人科や低用量ピルもツールの1つとして考え、ぜひ積極的に活用してください。
これまで男性中心の社会だった時代は、女性の辛さが理解されにくく、生理のことを会社や社会で相談するのが難しかったと思います。、しかし、働く女性が増えている現代においては、女性だけでなく男性や企業も一緒になって女性特有の健康課題を考えることが必要不可欠です。生理や生理ケアについては「女性だけの問題」とされがちですが、社会全体の課題として、みんなで取り組んでいきたいと思います。
生理の痛みや症状は、自分に合ったより良い解決方法は必ずあるので、勇気を出して産婦人科へも相談してくださいね。
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