生理は女性にとって健康状態のバロメーターでもあります。
生理の基礎知識や、生理中でも快適に過ごすためのセルフケアをご紹介。
生理は十人十色 快適に感じるものに出会ってほしい
= PROFILE =
4歳でテニスを始める。15歳で日本人初の世界ジュニアランキング1位を獲得し、17歳でプロに転向。シングルス492勝(優勝6度)、ダブルス566勝(優勝38度)、4大大会のダブルス優勝4回。ダブルスでは世界ランク1位に輝き、日本を代表するプロテニスプレーヤーとして一時代を築いた。2009年、34歳で現役を引退。その後、順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科にて修士課程を修了。現在、スポーツコメンテーター、後進の育成事業を手掛けるなど、多方面で活躍し、2023年度からはビリー・ジーン・キング・カップ日本代表監督に就任。プライベートでは2児の母。
Q.「低用量ピルで生理ケアの日」に賛同する理由を教えてください
プロテニスプレイヤーとして17年間の選手生活において、体が資本であるという観点から、生理を含めて常に自分自身の体と向き合うことが求められてきました。そのため、自分の体と向き合ってきた自負があります。
一昔前にはなりますが、海外では当時すでに低用量ピルを服用している選手も多く、「私も使ってみたい」と考え、日本でのかかりつけの産婦人科に相談したことがあります。しかし、当時の担当医は副作用などへの懸念から、低用量ピルに対してポジティブな考えを持っていなかったこともあり、実際の服用には至りませんでした。その後、選手としての現役生活を終えて、結婚し子どもがほしいと思った時、すぐには授からず悩みを抱える中で、「あの時に低用量ピルなども含めて何らかの選択をできていたら体の負担をもう少し軽減されていたのではないか」と考えたこともありました。
低用量ピルにはさまざまな種類があり、自分の体に合わないこともあるので気軽にすすめられるものではないかもしれません。ただ、合うものが見つかればとても快適に過ごせると思います。生理痛が軽減されたり、心と体の両方への負担も減るということをさまざまな方々から聞いて、低用量ピルとその服用は生理ケアの選択肢のひとつとして大事なことだと捉えています。
まずは低用量ピルが生理ケアの選択肢となることを心から願い、この度「低用量ピルで生理ケアの日」に賛同させていただきました。
Q.杉山さんがプロテニスプレイヤーとして活躍する中で、生理に関して悩んだり、苦労された経験はありますか?
私は生理痛が軽い方でPMSも特になかったので、生理について悩んだりすることがほとんどありませんでした。それでも試合中、自分ではあまり感じてはいなかったのですがボールへの反応がわずかに遅れる傾向にあったり、腰の痛みや「体が重いな」と感じることが時々ありましたね。プレーに影響がある部分はトレーニング面で可能な限りカバーできるように取り組んでいました。
また、生理中は10代の頃から必ずタンポンを使用してきました。ナプキンも選択肢ではあったのですが、プレー中に激しい動きをしたり、汗をたくさんかいてすぐに不快になってしまうのと、何よりも私がジュニアだった時代は基本的に白のウェアを着用しなければならなかったので、経血漏れが心配でタンポンが必須アイテムでした。今はそうした部分も変化していて、白以外のウェアも着用可能になっています。
ちなみに、ツアーと呼ばれる世界各地で開催される大会では特にウェアの色に規定はないのですが、世界四大大会のひとつであり長い歴史を誇る『ウインブルドン』(英国ロンドン)では、練習および試合の際の厳格なドレスコードで“オールホワイトルール”とも呼ばれる「必ず白のウェアを着用しなければならない」とする伝統的な規定があり、それが昨年ようやく一部緩和されました。生理中の女子選手の経血漏れなどによる精神的ストレスの軽減を目的に、「女子選手はショーツまたはスカートより長くないことを条件に、無地の中間色または濃色のアンダーショーツの着用が認められる」という条件が加わったものです。時間はかかっているものの、女性たちが声を上げ続けることによって少しずつ確実に環境とカルチャーのアップデートが進んでいるのを感じています。
Q.現在、服用率が上がってきている低用量ピルですが、指導者としてアスリートやアスリートを志す人たちに向けて、低用量ピルも含め生理ケアをどのように伝えていきたいですか?
日本の女子テニス選手の代表監督を務める中で、指導者として選手それぞれが抱える生理の悩みとの寄り添い方もさまざまだと感じています。現役時代の自分自身の生理痛が重くなかったからこそ、当事者である選手それぞれの感覚と声に耳を傾けて、それぞれの状況と向き合って一緒に対策を考えていきたいと日々考えています。それぞれの気持ちの尊重を大切にし続けていきたいです。
私が直接指導している選手たちの低用量ピルの服用率はとても高い印象があります。なかには、自分の体に合うものに出会うまでは苦労したという話を聞くこともあり、低用量ピルはさまざまな種類があるからこそ、自分の体とライフスタイルに合うものに出会うまで諦めずに試すことも大切だと思っています。応援していきたいですね。
Q.不妊治療を経て妊娠・出産をされた経験から、生理ケアについて今どのように感じられていますか?
子育てをしていて日々幸せを感じている中で、テニスに限らずスポーツに取り組む中でよくあることだと思うのですが、例えば無月経になっても「生理がめんどくさいから」といって放置せず、産婦人科を積極的に受診してほしいと考えています。特にアスリートは目の前の試合や状況に目を向けがちですが、長い目で見ると現役生活を卒業した後の人生の方が長いので、そういった視点を持つことを心がけてしっかりと自分の体と向き合ってほしいと願っています。
不妊治療中、4回ほど体外受精に取り組んでも着床しなかった時は本当に深く悩みました。「あの時に低用量ピルなども含めて何らかの選択をできていたら体の負担をもう少し軽減されていたのではないか」と何度も過去を振り返ったこともあり、こうして少しずつ低用量ピルとその服用が選択肢として広がっているのはと多くの女性たちにとってとても良いことだと思っています。
私には娘がいますが、彼女が一番快適に過ごせることがベストだと思うので、これから成長していって思春期を迎えたら母親として親身に寄り添いたいですね。今はさまざまな生理ケアのアイテムがあるので、母親同士での情報交換もしながらベストな選択をしていけたらと考えています。生理ケアは快適に過ごすことが一番の目的だと思います。
Q.このインタビューを読んでいる女性たちに向けて、アドバイスをお願いします。
「生理」と言っても十人十色で、感じ方も症状もそれぞれ異なり、いかに自分の生理と向き合って、自分なりに一番快適に過ごせる方法を追求していけるかが大切です。本プロジェクトをきっかけに、正しい最新の情報を得ることが快適に過ごせる方法を知る近道になると思います。
知らなければそれまでですが、知っているというだけで選択肢が増えます。新しいことにトライするには勇気がいると思いますが、挑戦してみたらそこには快適な暮らしが待っているかもしれません。チャンスがあるのに挑戦しないのはもったいないと思います。ぜひ積極的にさまざまなことを試して選択を重ねて、自分が一番快適に感じるものに出会い、より心地よく過ごせるようになってほしいと願っています。
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こんな経験”あるある!”と思わず頷いてしまう?mederiユーザーからの体験談に基づいた、mederiオリジナル漫画シリーズです。生理やピル・女性の健康に関して、楽しく学んでみましょう!