「ライフプランまで見据えた向き合い方を」1年半の無月経を振り返る  元レスリング五輪金メダリスト・登坂絵莉さん

スポーツ女子のモチベーターメディア「B&」にて、弊社代表取締役の坂梨亜里咲(さかなし・ありさ)と女性アスリートとの特別対談企画がスタートしています。

今回は、元レスリング日本代表で、2016年のリオ五輪で金メダルを獲得した登坂絵莉(とうさか・えり)さんをゲストに迎え、ご自身の経験と想いを伺いました。(転載元:B&)

登坂さんは、現役中の2021年8月に出産し、2022年4月に引退しました。
1年半の無月経や生理不順、出産と引退を経て、当事者として登坂さんが伝えたいのは「自分の身体や生理に関する知識を正しく知っておくこと」と「育児を見据えたライフプランを複数もっておくこと」です。

1年半の無月経。妊娠できるか不安だった

登坂さんは、2020年の現役中に結婚、2021年8月に第一子を出産されました。現役時代の早いうちから、将来のライフプランは描いていたのでしょうか?

【登坂さん】
イメージはありました。高校生の頃から、東京五輪で金メダルを獲って、引退して出産することが夢だったんです。残念ながら出場は叶わなかったのですが…。

【坂梨】
計画的だったのですね。

【登坂さん】
周りでも不妊で悩んでいる方が多くて、高校生の頃から不妊の可能性を考えて行動しなければ、と思っていました。

 

では昔からご自身の身体とは、しっかり向き合われていたのでしょうか?

【登坂さん】
実は思っていただけで、きちんと向き合えてはいなかったんですよね。毎日ハードな練習があって体調も日々変わっていくなかで、身体の不調は放っておくことが多かったです。生理の時に眠かったり腰が痛かったりしても、練習の疲れや試合のストレスのせいだと決めつけていました。

【坂梨】
アスリートは身体を酷使するからこそ、鈍感になりやすい、とも言えますよね。

【登坂さん】
その方がアスリートとしては「強い」のかもしれません。でもアスリートである前に一人の女性であることを見失ってしまうのはこわいです。私自身、大学〜社会人にかけて1年半、無月経を経験しています。当初は「生理が来ないからラクだな」と思っていましたが、「こんな身体で将来妊娠できるのだろうか」と不安になることもありました。
あとは、減量時にも生理がよく止まっていました。試合の前日の17時ごろに計量があって、軽量をクリアしたのちに食事をとると19時ごろに生理が来るんです。そうなると試合の日はいつも生理2日目(※)でつらかったですね。

※生理期間は2〜3日目が最も経血量が多く、生理痛が重い場合が多い。

【坂梨】
無月経になって、婦人科は受診されたのですか?

【登坂さん】
はい。婦人科を受診し、血液検査や診察を受けましたが、特に問題は見つからず心理面からくる影響だろうと。ちょうど五輪の時期で、終わって実家に帰った日に生理が来たのでやはりストレスだったのかなと思っています。

【坂梨】
ご自身の意思で受診されたのですか?

【登坂さん】
一度不安に思ってしまうと競技に集中できなくなってしまうくらい心配性なので、思いきって行ってみました。今も、年に一回の検診は欠かさず受けています。先月は不正出血があって、その時も心配になって行きましたね。婦人科に気軽に行っていい、ということを早めに知りたかったです。高校時代から生理不順などトラブルがあったものの、誰にも聞けない状態でした。小さな不安でも相談していい場所だ、と教えてほしかったです。

【坂梨】
生理について正しく知ったのは、いつ頃だったのでしょうか?

【登坂さん】
社会人になってからです。代表チームの合宿に婦人科の先生が来てくれました。それまではPMS(月経前症候群)という言葉すら知らない状態でしたね。

 

ピルも、ひとつの選択肢

コンタクトが多いスポーツですし、競技中の経血漏れも気になりそうですよね

【登坂さん】
いつも心配していました。ユニフォームが身体に密着するので漏れに気づく人もいたと思います。私はタンポンを使用していて出血量も少なかったので、目立つことはなかったですが。

ピルは服用されていたのでしょうか?

【登坂さん】
社会人になって服用し始めてからは、重かった生理痛がかなり改善されました。もっと早くから飲みたかったのですが、減量への影響が出ないように「試合が終わってから飲み始めよう」と、婦人科の先生と相談して決めました。

【坂梨】
アスリートの方だと、なかなか長期間をかけて試してみることが難しいですよね。

【登坂さん】
そうなんです。でも実際飲んでみると、私の身体には合っていたなと。月経が来る期間を把握できましたし、痛みもやわらぎました。今は飲んでいないですが、生理が規則正しく来ることが嬉しいです。何もせずに自然な状態で来ることに喜びを感じています。

【坂梨】
私も以前、過度なダイエットが原因で無月経になったことがあります。若い頃は「生理が来るとめんどくさい」と思う時期があると思いますが、自分の身体ときちんと向き合える大切な期間なんです。妊娠ができるサインのひとつでもありますし、放置しないでもらいたいですね。

【登坂さん】
練習中の合間に痛み止めを飲んで我慢している選手も多かったです。我慢するのが当たり前にはなってほしくありません。

 

 

現役時代、生理について相談する環境はありましたか?

【登坂さん】
なかったです。どうしても個人差があるので、指導者が全てを理解するのは難しい部分もあると思っています。直接話すことに抵抗を感じる選手もいるので、例えばアプリを活用するなど共有する方法も工夫があればいいなと。後輩から生理について相談を受けることがあるので、まだまだレスリング界での体制は整っていないように感じています。

【坂梨】
後輩へ伝えていきたいことはありますか?

【登坂さん】
私と同じように悩んでほしくないので、自分の経験を伝えていきたいです。ネット上にたくさん情報はありますが、経験者の声の方が現役選手には響くかなと。あとは、体調が悪くなったときに疲労やストレスのせいにせず、きちんと原因を追求することが大切だと感じています。特にレスリングは、根性論が強い環境にあると思います。月経異常が骨粗鬆症などのリスクを高めるといった記事を拝見したこともあるので、身体のことは精神論で済ませないようにしてもらいたいですね。

 

育児まで見据えたライフプランを複数もっておく

【坂梨】
出産後も大変なことが多いと思いますが、不安になることはありますか?というのも、私自身子どもが生まれたらどうなるのだろうと思うことがあります。どのような形で仕事が続けられるのだろう、夫との育児のバランスはどうなるのだろう、と。いろいろなピースをうまく組み合わせなければ子育ては成立しないので、早めのうちから考えておく必要があるなと思っています。

【登坂さん】
小学校に入るまでは誰かに子どもを預けなければ、なかなか自由な時間がとりにくく、今まで当たり前のようにしていたことができなくなりますよね。その中で、みなさんどのようにされているのかは気になります。私の場合、母が子どもを預かってくれたり、夫も家事育児に積極的に参加してくれるおかげで、仕事とも両立することができています。自分自身が育児をしながら、どのように活動していきたいかを考え、夫婦で話し合い、すり合わせをしていくことが重要だと感じました。

【坂梨】
自分だけの生活ではなくなりますし…かなり大変ですよね。

【登坂さん】
想像以上にフットワークが重くなりました。保育園に預けていても、急な発熱があればお迎えにいく必要があります。

【坂梨】
ママって、ある意味ディレクターですよね。家族をどう動かすかを考えなければいけません。

【登坂さん】
ミルクをあげる行為ひとつにしても、前後の準備や片付けにも時間を割かなければいけないんです。ただあげる時間だけじゃないんだよと、夫と言い合いになったことがあります(笑)。

 

 

引退を決意された時は、どのようなお気持ちだったのですか?

【登坂さん】
怪我が決め手でした。産後復帰も考えていたのですが、症状が改善されない中で、育児とのバランスも考えると難しいなと思い決断しました。でも、なかなか気持ちを切り替えられませんでした。東京五輪中に出産しましたが、試合を観戦するのもつらかったです。今でも悔いなくやりきったとは思っていません。いちばん良い状態で引退するのは、難しいことだと痛感しました。

【坂梨】
レスリング界では、出産後も競技を続けられている選手はいますか?

【登坂さん】

過去にも数人はいらっしゃったと思います。直近ではリオ五輪と東京五輪で金メダルを獲得している金城(旧姓:川井)梨紗子選手が、産後半年くらいで復帰しています。

以前と同じようには動けないこともあるのではないかと思います。育児との両立も簡単なことではないと思いますが、また競技の舞台に戻ってきて戦う彼女の挑戦自体が素晴らしいことだなと感じています。このように「出産=引退」という道だけでなく、いろんなライフプランを視野に入れながら選択していけるといいですね。

【坂梨】
アスリートこそ、早めの段階で結婚や出産を含めたライフプランをイメージできるといいなと。その上で妊娠適齢期を踏まえて、引退と出産をどうしていきたいのか考えてほしいです。そのためにも正しい知識をもって自分の身体や生理、不妊について知っていただきたいなと思っています。

 

「自分の身体は、自分で守って。」元女子バレーボール日本代表・大山加奈さん

スポーツ女子のモチベーターメディア「B&」にて、弊社代表取締役の坂梨亜里咲(さかなし・ありさ)と女性アスリートとの特別対談企画がスタートしました。

今回は、元女子バレーボール日本代表の大山加奈(おおやま・かな)さんをゲスト迎えた、第1弾の記事をご紹介します。(転載元:B&)

大山さん自身、「生理が止まっていないと(プレーヤーとして)一人前ではない」と聞いた経験もあるそう。目の前の試合と向き合うアスリートは、自分の身体をないがしろにしがちです。それでもなぜ、10代〜20代のうちに正しく対応すべきなのかーーー不妊治療の経験がある大山さんと坂梨さんが、それぞれの体験と思いを語り合いました。

(聞き手:竹村幸[元競泳日本代表]、文・市川紀珠)

「生理は、来ない方がラク」と思っていました

【坂梨】
mederi株式会社の坂梨亜里咲と申します。今回は、スポーツをしている女性を応援したいと思って企画させていただきました女性アスリートは、生理やPMSなど女性特有の不調と向き合いながら競技を続けられていることも多いと思います。大山さん自身に、こうした悩みはありましたか?

【大山さん】
私自身は月経も順調に来ていましたし、出血も多くなかったので、そこまで悩んだことはありませんでした。でも、周囲では月経が止まってしまっている子も少なくなかったです。高校時代3年間、一度も生理が来なかった子もいました。他にも生理痛が重くて吐いたり熱を出してしまったり、貧血で走れなくなったりしている子も目の当たりにしてきました。生理に悩まされている選手は、本当に多かったですね。

現役時代は「生理が来ないほうがラク」と思っていましたし、無月経でも気にしない選手もいました。「ストレスや練習が多いからだよね」と放っておいていましたね。生理が来ないことが異常だ、と捉えられていなかったんです。

 

【坂梨】
私も高校時代からずっと生理不順で、「生理は邪魔だな」と思ったこともありました。

【大山さん】
無知ですよね。学校でも、そこまでは教えてくれないですし。

【坂梨】
ざっくり学んでいる感じ。どうなったら異常なのか、どのくらい痛かったら産婦人科にいったらよいのか、判断できないですよね。生理痛はあって当たり前、我慢しないといけないと思っている方が多いのではないかと。人によって痛みが違うから相対的に捉えることもできないし、厄介なものです。練習を休むことは、許されていたのですか?

【大山さん】
生理を理由に休んでいる子はいませんでした。レギュラー争いが激しい中で、「これくらいで痛いというと、外されてしまうのでは」と思うと、素直に「つらい」と言えないですよね。現役当時は私自身も無知でしたし、悩みを抱えている仲間に対して何もしてあげられなかったです。「我慢するしかないよね」「痛み止めで抑えるしかないよね」と思うしかありませんでした。

 

ー生理不順や無月経を放っておくと、将来どのようなことが起こりうるのでしょうか?

【坂梨】
不妊症や子宮筋腫、子宮内膜症などにつながるリスクがあります。生理痛を抱えている方のおよそ7割が子宮内膜症を患っているとも言われています。「しょうがない」で放っておくと、将来妊娠できない確率が高まってしまうんです。

「産婦人科=子どもを産むための場所」と思っていたんです

【大山さん】
ピルに関しては、生理痛のひどかった子がピルを飲み始めて症状が緩和されていくのを見て、改めて「こういう方法もあるんだ」と思いました。月経前や月経中でも元気にプレーできるようになっていて、目を逸らさずに正しく向き合うことが大切だなと。

 

ー大山さんが現役だった頃は、ピルを使うことに対してどのように感じられていましたか?

【大山さん】
そもそも、ピルを使う選択肢がなかったですね。

【坂梨】
アスリートの方は、日頃から身体に気をつけられているので、病院も身近に感じられているのかと思いました。

【大山さん】
産婦人科はハードルが高かったですね。社会人になるとメディカルチェックがあって産婦人科の先生と関わる機会も増えますが、それでも行きにくさはありました。

 

ー産婦人科に対して、どのようなイメージがありましたか?

【大山さん】
「子どもを産むための場所」なのかなと。産科と婦人科が別物だとも思っていなかったです。人目を気にしてしまい、「行きにくい」と感じていました。

【坂梨】
名称がいろいろあるのも、わかりにくい原因ですよね。レディースクリニック、ウィメンズクリニック、婦人科、産婦人科……選ぶのも大変になってしまっています。

生理中のお悩みはいかがでしたか? サッカー選手からは、「ナプキンが落ちてしまうこともあり、プレーに集中できない」と聞いたことがあります。

【大山さん】
タンポンを使っている人がほとんどでした。

短パンからタンポンの紐がはみ出している子もいましたね。バレーはユニフォームがピタッとしているので、ナプキンにしろタンポンにしろ、見えてしまうのではないかと不安でした。タンポンをつけた上で、薄いナプキンをつけておくようにしていました。

 

ー競泳の場合、ピルで試合日から月経を移動させることが多かったのですが、バレーはいかがでしょうか?

【大山さん】
バレーは毎週のように試合があるので、ずらすのが難しいんです。競泳の選手は、ピルでコントロールすることに、抵抗を感じていなかったのですか?

ー感じている選手もいました。でもむしろコーチの方が「(ピルの影響で)太ってしまうのではないか」と間違った心配をしていることが多かったように思います。今でこそコーチに対しても講習会があったりと、正しく理解されるようになっていますが。

【大山さん】
確かに、「ピル=太る」はよく言われていましたね。

不妊治療は、パートナーとのすり合わせが大事

 

ー大山さんは、2021年2月に出産されていますが、不妊治療を受けられていましたよね。きっかけがあったのでしょうか?

【大山さん】
子どもを授かりたいと思っていたので、基礎体温を測り始めました。すると、34°C〜35°C台だったんです。「早めに原因を調べた方が良い」と思い、ブライダルチェックへ足を運びました。

先生には「血液中のAMH(アンチミューラリアンホルモン)(※)が42歳くらいの人の値。子どもができるとしたら35歳くらいまでかな」と言われました。そこから急いで、不妊治療のクリニックに通い始めたんです。
※卵巣年齢を計る検査で、自分の卵子がどれくらい残っているかの目安になる。

現役時代に大きな手術を経験していますし、痛み止めや精神安定剤も飲んでいました。「妊娠しにくい身体になっているかもしれない」と薄々思っていたものの、改めて聞くとショックでしたね。「子どもは産めるもの」と何の疑問も持たず思い込んでいたのが、覆されました。

ーそこから、さまざまな不妊治療に取り組まれたかと思います。治療中、最も大変だったときはいつでしたか?

【大山さん】
体外受精に挑戦した時です。できる限り自然な形で妊娠したいと思っていたので、それまではタイミング法と人工授精に取り組んでいたのですが、なかなか上手くいかず。思い切って、踏み出したんですが、それでもいい卵子が取れなくて……もうダメかもしれない、と思いました。「体外受精までステップアップしたら、子どもを授かるだろう」と、どこかで期待していたんですね。結果を見た時は、苦しかったです。

【坂梨】
わかります。毎回数十万円ほど、かなりの費用がかかりますからね。お金と時間をこれだけ時間をかけても手に入らないものがあるのか、と。

【大山さん】
これまでのアスリート人生は、目標を立てたら努力次第で達成できていました。でも不妊治療は、頑張ることが必ずしも結果につながらないんです。

【坂梨】
頑張りたいけど頑張れない、というのもストレスになりますよね。自分の存在価値を問い始めることすらあります。女性として欠陥があるのではないか、自分には産む権利がないのかなどと。

【大山さん】
そうですね。私も試せるものはなんでも試しました。

【坂梨】
パートナーとのすり合わせも重要だと感じています。私の場合、不妊治療3年目くらいのタイミングで「そもそもどうして子どもが欲しいのか」を話し合えたことが精神的な支えにもなっているなと。いろいろな家族のあり方があると思います。よく考えてみたら子どもは、絶対に必要というわけではないこともあるでしょう。当事者同士で、お互いの思いを把握しておくことが大切だと思います。女性だけの問題になってしまわないように、二人で向き合って欲しいですね。

女性アスリートへ、「自分の身体は自分で守って」

ー今の10代や20代の若いアスリートに必要だと考えることを教えてください。

【大山さん】
栄養、睡眠、休養です。特に学生は休みもなく、練習を続けることが多いと思います。でも休みはしっかりとるようにして欲しいです。他競技の選手ですが、「(過度の練習で)生理が止まっていないと一人前じゃない」と言われることもある、と聞いたことがあります。栄養に関しては、リカバリーを意識した食事をとって欲しいです。私自身、現役時代に怪我をしたのも食生活の影響があったと感じています。今だと調べればたくさん出てくるので、自分から情報を見つけてもらいたいです。

【坂梨】
月経不順や無月経など、異常を感じたら放っておかずに産婦人科を受診して欲しいです。今日のお話を聞いて、アスリートを取り巻く環境は想像以上にハードだと改めて感じました。現段階では考えていない方も多いと思いますが、いずれ妊娠・出産を考える時期がきます。その時のために、きちんとケアをしておいて欲しいですね。

【大山さん】
特に若い頃は、目の前の試合に勝つことが何よりも重要なんです。勝てるなら、身体が壊れてもいいし、生理なんて来ない方が楽。どうしてもそう思ってしまうんです。でも長い目で見れば競技人生はほんの一部です。自分が望む未来を手に入れられる身体を作っておいて欲しいです。あとは、周りの大人も正しい知識を伝えてあげて、選手を守ることも大事かなと。

ー周りからのサポートも大切ですよね。最後になりますが、改めて女子アスリートへのメッセージをお願いします。

【大山さん】
生理のことなど、言いづらい部分もあると思います。でもその時に適切に対応しないと、将来子どもを授かりたいと思っても授かれない身体になってしまう可能性があります。本当に悲しいことなので、勇気を出して、相談しやすい人に話してもらいたいです。自分の身体は自分で守らなければいけません。

【坂梨】
最近では生理に対してさまざまな選択肢が増えてきました。吸水ショーツや月経カップ、ミレーナ(※)など。その中で、低用量ピルもひとつの選択肢として、ご自身に合うものを選べる時代になっています。我慢せず、自分にあったものを見つけて、スポーツと向き合う時間をより楽しく長く続けてもらいたいと思います。

※黄体ホルモン(レボノルゲストレル)を子宮の中に持続的に放出することで、子宮の内膜に作用し、避妊と過多月経・月経困難症といった生理に関する症状を緩和する効果がある

「10年間ピルを飲み続けた私がmederi Pillをはじめた理由」mederi代表 坂梨 亜里咲

mederi Pillを展開するmederi株式会社では、“女性の一生の健康に寄り添っていきたい”との想いで、サービスやプロダクトを展開しています。

mederi  magazineでは、mederiのサービスに携わっているメンバーや有識者の方々が、よりユーザー様と近い距離から「mederiならでは」の情報をお届け。

第2回は、自身の不妊治療経験がきっかけでmederiを立ち上げた代表の坂梨亜里咲に、mederiへの想いやこだわり、世の中に届けたいメッセージなどをインタビューしました。

坂梨 亜里咲

mederi株式会社 代表取締役

大学卒業後、ECコンサルティング会社に勤務。女性向けwebメディアのディレクター、COO、代表取締役を経験した後に、2020年自らの4年にわたる不妊治療経験からmederi株式会社を創業。

「20〜30代の働く忙しい女性でも、簡便に利用できるサービスを」

―まずは、なぜ「mederi」を立ち上げたのかを教えてほしいです。

mederi株式会社は私の不妊治療経験がきっかけではじまった会社です。 26歳から不妊治療を始めて、時間とお金を費やしてきました。精神的にも肉体的にも辛い体験をしてきたので、妊活や不妊治療に悩む人を減らし「産みたい人が希望するタイミングで産める社会にしたい」という想いから起業しました。

エイジレスな人生が送れるようになった現代でも、生殖機能には確実にタイムリミットがあることを知ってもらいたい。そのためには、正しい情報発信が必要だと思い、変化する女性のライフステージに合わせたサービスやプロダクトを展開しています。

 

―mederi(メデリ)というネーミングは、どこかで聞いたことがあるような感じもするし、可愛すぎない響きですよね。由来はありますか?

「私を愛でる」という意味から、mederi(メデリ)にしました。 女性の健康にフォーカスした事業で、医療機関と連携して本当に良いものをユーザーさんに届けたいという想いから、medicalの「med」も入っているところが気に入って決めました。 ここだけの話、最初は「メデリー」にもしようかと思ったんですが、可愛すぎるかなって思って、語尾を伸ばさない「メデリ」にしました。

 

―mederiのファーストプロダクトは妊娠希望の女性に向けたサプリメントとチェックキットでしたが、「mederi Pill」をはじめた理由と、特徴を教えてください。

オンラインピル診療サービス「mederi Pill」は、低用量ピルの処方を希望される女性とオンライン診療をしてくれる産婦人科医をつなぐマッチングプラットフォームです。 20〜30代の働く忙しい女性でも簡便に、毎月訪れる生理トラブルやPMSへのケアができるようスタートしました。 そもそも私自身、生理不順を治すために10代の頃から妊娠を望むまでの10年間、ピルを服用していたんです。 残念ながら学生時代は、友達から「避妊薬を飲むなんて!」とネガティブに捉えられたり、驚かれることも多かったですね。 だから、大前提としてピルのメリット・デメリットを丁寧に発信していきたいと思っています。ピルのことを正しく知っていただいた上で、医師の診療のもと、ご利用いただきたいです。

 

「mederiの社員はそもそも9割が女性。 ピルを服用中か、現在は妊娠希望で休止しているメンバーで構成」

―実際にピル服用経験がある方がサービスに携わっているのは、とても心強いですね。

mederiの社員はそもそも9割が女性で、100%がピルを服用中か、もしくは現在は妊娠希望で休止しているがピル服用経験があるメンバーで構成されています。 なので当事者としても、ユーザー様の声には常に敏感ですし、最高の体験を提供したいという想いがかなり強いです。

私自身は、かかりつけ医からピルを服用することで、生理周期が整ったり、肌荒れが改善したり、子宮内膜症の予防にもつながるという説明を受け、多様なメリットを感じ服用をしていました。しかし、日本では“避妊用”のイメージが先行したせいか、服用率は3%程度と言われており、諸外国より低い状況です。

 

―現在、mederi Pillは先行会員様に提供されているとのことですが、サービスを通して新たに気づいたことはありますか?

先行会員募集時には私が想定していた以上の方々が応募してくださって、多くの女性がピルにご興味を持ってくださっていること、PMSや生理不順に悩んでいらっしゃることがわかりました。

現状は先行会員のみなさまに、より良いサービス提供ができるよう、日々体験改善を行っております。 これからも、ユーザー様お一人おひとりに真摯に向き合っていくことを第一に、サービスを提供させていただきたいです。

 

―ユーザー様からの嬉しい声などがあったら教えてください。

mederi Pillは「診療の質」にこだわっており、処方医師は全員が産婦人科医です。 診療後にはユーザー様にアンケートをとらせていただいているのですが、現在約98%の方がmederi Pillのオンライン診療に満足とご回答いただけています。 「産婦人科にかかるのは毎回緊張するけれど、自宅でできるならではのフラットな空気感が話しやすく、すごく安心できる」「興味があったがチャレンジする機会がなかったので嬉しい」等、産婦人科やピルを身近に感じてもらえるお声を多くいただいています。

産婦人科を身近に感じていただいて、対面診療に繋げたいと考えているので、そのようなお声はとても嬉しいですし、診療満足度100%となるように改善していきたいです。

 

「知らなかった」で後悔が生まれないよう、 ユーザさまの人生に点ではなく線で、真摯に寄り添っていく

―サービスとともにユーザーや世の中の女性に伝えたいことはありますか?

結婚する・しない、子供を産む・産まないは自由だと思っていて、どんな価値観も私は認めたいし、社会がそうあるべきと思っています。 しかしながら、年齢を重ねると共にからだのことに関して私のように「もっと早くから知っておけばよかった」というシーンが多々出てくると思います。 「私は健康だから大丈夫」と過信せずに、定期検診を受けて、日々ご自身のからだの変化に敏感でいていただきたいです。

もちろん「もっと早く知っておけばよかった」「気づけばよかった」という後悔が生まれないよう、mederiも全力でサポートさせていただければ幸いです。

 

―最後にmederiが実現・挑戦していきたいことを教えてください。

女性の人生に点ではなく線で寄り添っていきたいです。 生理トラブルやPMSに悩む女性、妊娠を希望する女性、そして更年期症状に悩む女性に向けたサービスやプロダクトを誠実に提供することで、多くの女性が納得できる人生を歩むためのサポートをしていきたいです。 私は早発閉経と呼ばれる症状で、平均よりも早くから更年期症状がみられる可能性が高いと言われているんです。女性として自分が全て体感することだからこそ築けるサービスがあると信じています。

ゆくゆくは性差関係なく毎日のQOLを上げるようなサービスを提供していきたいんですけど、現状はちゃんと自分ごと化できるサービスから丁寧にしっかりと、利用してくださるユーザー様にご満足いただけるように精一杯尽力いたします!

 

mederi magazineの記事をチェック

「卵子の数は減っていく。生殖年齢は大昔から変わっていないんです」産婦人科医 吉村泰典先生

mederi  magazine創刊号に登場いただくのは、生殖医療の第一人者として、これまで3千人以上の不妊症、5千人以上の分娩など数多くの患者の治療を担当されてきた産婦人科医師 慶應義塾大学 名誉教授 吉村 泰典(よしむら やすのり)先生。

日本産科婦人科学会理事長、日本生殖医学会理事長として女性の健康はもとより、内閣官房参与として少子化対策・子育て支援の政策立案に取り組まれた吉村先生。

前編では「月経とうまく付き合うためのピルの有用性」について貴重なお話を伺えました。後編は、女性が自分らしいライフプランをたてていくために、妊娠、出産、不妊のことを深掘り。ぜひご覧ください。

インタビュアー:mederi 代表取締役 坂梨 亜里咲

吉村 泰典(よしむら やすのり)先生

産婦人科医師
慶應義塾大学 名誉教授

1975年慶應義塾大学医学部卒業。米国ジョンズホプキンス大学留学、杏林大学医学部産婦人科助教授などを経て、1995年慶應義塾大学医学部産婦人科教授。臨床現場、医学教育の傍ら、日本産科婦人科学会理事長、日本生殖医学会理事長、日本産科婦人科内視鏡学会理事長、その他数多くの学会理事など学会要職の他、厚生科学審議会専門委員、法制審議会委員、内閣府総合科学技術会議専門委員、文部科学省科学技術・学術審議会専門委員、日本学術会議生殖補助医療の在り方検討委員会委員を歴任。これまで3千人以上の不妊症、5千人以上の分娩など数多くの患者の治療を担当。


残酷なことに全ての人が子どもに恵まれるわけではない

ー吉村先生は45年以上も医師として歩まれてきて、かなり多くの患者さんを診られていらっしゃいますが、特に記憶に残っていることはありますか?

「子どもが欲しい」というカップルが無事、妊娠・出産をできたときはすごく喜ばれますし、私もとても嬉しいです。しかし、そういった幸せな方々よりも、どちらかというと子どもに恵まれないカップルがとても印象的ですね。

残酷なことに全ての人が子どもに恵まれるわけではないんですよ。大学病院は最終的なターミナルホスピタルみたいなところですから、他の病院では授かれなかったり、妊娠適齢期をはるかに超えているなどの理由から、藁にもすがる想いで来られる方が多いんですね。

みなさん必死で、何度も体外受精に挑戦される方、子どもを諦める方さまざまな方がおられて、涙を流される方も非常に多いんです。 

 

ー私自身も不妊治療をしており、産婦人科でたくさん涙を流してきました。吉村先生は3000人以上の不妊治療を手掛けてこられましたが、どのような治療を行ってきたのでしょうか?

まず、採卵手術によって体内から取り出した卵子を体外で精子と受精させる「体外受精」と呼ばれる治療。体外受精を何度もされた、ある患者さんのことは今でも記憶に残っていますね。

その方は体外受精を6回行って、残念ながらそのうちの2回流産をしてしまって。その後、なんとか妊娠をすることができたのですが、当時妊婦さんは40歳で高齢妊娠・出産というリスクの高い状態でした。

妊娠初期に超音波検査をした時に、赤ちゃんの首の後ろに水が溜まっていたんです。医学的にはNT(胎児後頸部透亮像)と言い、NTの厚さが胎児の染色体異常と関係があることで知られていて、NTが厚いとダウン症などの染色体異常の可能性があるとされています。

流産後の念願の妊娠ですから、胎児の経過観察と共にご夫妻がどのような選択をされるのか診ていこうというところで、残念ながら子宮内で胎児が死亡してしまいました。それからも治療されましたが、結局子どもには恵まれなかったんです。

 

ー妊娠・出産というのは奇跡の連続なのだと気付かされるエピソードですね。家族の形が多様化し、「子どもを持つ」ためのさまざまな選択肢を選ばれる方もいらっしゃいますよね。

私はAID(非配偶者間人工授精)にたくさん取り組んできました。男性不妊の場合に用いられる方法で、精子がない男性の代わりにドナーの精子を使って人工授精するものです。

AIDを選択されたカップルが、「AIDで子どもを授かったんだ」ということを子どもに言うべきかどうかが非常に大きな問題になっています。

「私たちはAIDのことを子どもには一切知らせません、社会は出自を知る権利だとかいっていますが、私たちは夫婦二人で墓場まで持っていきます」と涙ながらに仰ったご夫婦がいて、それはもう印象的でしたね。いまでも私に感謝をしてくれていて、毎年、お子さんの成長がわかる年賀状をくれます。

 

ー固定観念に縛られない色々な家族の形がある一方で、社会的にも向き合っていかなくてはならない難しい課題もあることが分かります。

私自身、婦人科外来・妊娠管理・分娩など、産婦人科医として多くの経験を積んできましたが、特に生殖補助医療を専門にしています。

女性のライフステージサポートだけではなくて、生まれた子どもの成長も含めて、家族をサポートしていく社会性が強い分野だと思います。

「生まれた子どもが幸せな人生を送り、親とともに幸せを分かち合えること」を実現するためにも、社会・家族・夫婦の在り方について常に考えています。

 

卵子は増えずに、減る一方。生殖年齢にはリミットがある

ーいつか子どもを産みたいと考えている女性に、知っておいてほしい知識はありますか?

時代やライフスタイルは変わっても、生殖年齢は大昔から変わっていないということです。

戦争中の辛い時期から比べると体内の栄養状態も非常によくなっていて、現代女性の初経は昔よりも3年ほど早くなってるんですよ。ところが、閉経の年齢平均は50歳前後と、変化していない。要するに、生殖年齢というのはいかに寿命が延びても、変わらないものなんです。これは女性のみならず、男性も知っていただきたい事実です。

 

ー私自身も26歳で初めて不妊治療を行って、生殖年齢にリミットがあることを知りました。産めない状況に直面してから妊孕力に気づくカップルが遅い印象ですが、いかがでしょうか?

やっぱり小学校の高学年あたりからこういう「からだの仕組み」をきちんと教えて行かないといけないですよね。日本人の生殖知識レベルは、国際的にみても極めて低い。
しかし、知らなかったみなさんが悪いわけではないです。だって、学ばなかったのではなく、学ぶ機会がないだけだから。

日本は、「性行為をすることで子どもを産むことができる」「性行為をしないと新たな命は誕生しない」ということから、きちんと性教育をしていかないといけません。例えば、精巣は精子を作るところですが、卵巣は卵子を作るところではないんです。

 

ー女性の妊孕力を語る上で、大事な「卵子」について詳しく教えてください。

卵子は年齢を重ねるとともに年をとり、数が減ります。精子と違って増えないんです。

女性の持つ卵子の数が、1番多い時期はお母さんのお腹の中にいる妊娠5ヶ月。このとき約600万~700万個まであった卵子は閉経まで減少し続けます。

生まれてくるころには約200万個となり、排卵が起こり始める思春期頃には30万個まで減少するんです。

卵子の数や質は不妊にも紐づきます。どんなに生殖医療の技術が進化しても、女性の妊娠適齢期は、卵子の量が充分にあって、質も正常、卵巣機能も正常な時期、つまり35歳頃までであることに変わりはありません。

 

我慢をせずに、産婦人科やピルなどをうまく活用して

ー読者のみなさんも、これまでの人生で「卵子」という存在を意識してこなかったと思うのですが、将来的に確実に必要な知識なので学生時代に知る機会がほしいですね。

卵子が減っていく一方というのは、びっくりするでしょ。妊娠・出産・不妊についての知識は、もちろん男性も学ぶべきですよ。

当たり前のようにパッと妊娠できると捉えて、避妊ということばかりに目が行くかもしれないけど、精子、卵子、子宮、着床……とさまざまな部分で起こりうる障害を超えていかないと妊娠できないんですよ。

そして、妊娠というのはね、女性にとってある種の最大のストレステストなんです。血液量が1.5倍、体重も10㎏増え、体に大きな負担がかかります。尿糖が出たり、血圧が高くなり、いろいろな症状が出てきます。男性にはとても耐えられないストレスでしょうから、しっかり理解して、どうやって女性をサポートできるのかを考えてほしいですね。

 

ー最後に、記事を読んでくれている女性にメッセージをお願いいたします。

私は産婦人科医だけれども、「子どもを絶対に産みなさい」っていう主義では全くもってありません。産む・産まないは自由であるべきですし、シングルマザーとして産んでも結構だと思っています。

いつか子どもを産みたいと思う人は、私がお話ししてきたように生殖年齢にはリミットがあるのでなるべく早いうちに妊娠適齢期を意識した人生設計をしましょう。お仕事は年齢を重ねてもできるでしょうけど、子どもを産むことはそうはいきませんからね。

そして、女性のからだは男性以上に非常に複雑で、女性ホルモンの多い・少ないによって様々な不調が引き起こります。我慢や無理をせずに、産婦人科やピルなどをうまく活用し女性ホルモン、月経をコントロールしていくことが、女性のQOL向上のためにとても大切です。

「ピルは生理に悩みを抱える女性達の強い味方になってくれるはず」産婦人科医 郡詩織先生

 今回、登場いただくのは、 郡 詩織(こおり しおり)先生。

産婦人科専門医とがん治療認定医を取得されており、大学病院に入局したのちに、総合病院で勤務されていた郡先生に、「これまでのご経験やピルについての想い」を語って頂きました。

インタビュアー:mederi 代表取締役 坂梨 亜里咲

郡 詩織

産婦人科専門医・がん治療認定医 取得

「女性目線であること」を大切に

ーまずはなぜ、医師の中でも、産婦人科医を選択された理由やエピソードを教えていただきたいです。

私は学生の頃から産婦人科医になりたいと考えていました。

もともと手や体をを動かすことが好きなので外科系の診療科に進みたいと思っていました。学生実習の時に初めてお産の瞬間を見た時に、難しいお産を格好良く取り扱ってる産科医の様子を見て感動し、産婦人科医を選択したんです。

 

ーこれまでの産婦人科医としてのあゆみを教えていただきたいです。

大学病院に入局した後、総合病院で勤務してました。その間に産婦人科専門医とがん治療認定医を取得しました。

今は次男を出産後に、少しずつ仕事を再開しているところです。

 

ー産婦人科医として、郡先生の心に残っている患者さんとのエピソードを教えてください。

双子の帝王切開をしていた時に、羊水塞栓症になった患者さんの治療にあたったことが1番印象に残っています。羊水塞栓症とは、産科出血の中でも母体の産後の出血を止める手立てがとても難しい病態をいいます。

私の経験したケースでも、出血を止めるために子宮全摘という辛い選択肢を選ばないと母体を助けることが難しい状態でした。幸い、子宮全摘を行ってからは出血が止まって母児ともに安定して経過しました。

患者さんからも感謝のお言葉をいただきましたが、患者さんやご家族に辛い選択を迫らなければならなかったことなど、これでも良かったのかと今でも思い返す時があります。

 

ーmederiのどのようなところに共感していただき、医師として携わっていただいているのでしょうか?

私達産婦人科医は、女性の一生に関わる仕事と言っても過言ではありません。仕事柄、診療自体も「女性目線であること」を大切にする必要があると考えています。

mederiではオンラインのピル処方や、妊活サポート事業など幅広く事業をされています。

それぞれ女性特有の悩みに対して女性目線でサービスが展開されており、女性としても、産婦人科医としても大切な視点だなと気づかせていただき、医師として携わっています。

 

「日本でもピルが浸透して、理解が進んだ社会に」

ーこれまで女性の一生に関わってこられた郡先生が、産婦人科医としてピルをどのように捉えているのか教えていただきたいです。

ピルは非常に有用な選択肢だと考えています。しかし、残念ながら日本でのピルへの抵抗感は根強く残っていると思います。

今年はオリンピックもあり、「女性アスリートへの月経困難症状に対するピルの使用について、日本は海外から遅れていること」「婦人科的な観点からもアスリートをサポートしていくこと」も話題になっています。

少しずつ日本でもピルに対する有用性が浸透して、理解が進んだ社会になってくれればいいなと思いますし、その一役が担えたら嬉しいです。

 

ーピルについて、これまでの処方を通して感じてきたことを教えていただきたいです。

今までの勤務先でも、ピルを処方する機会が多かったです。婦人科の病気の有無に関わらず月経や、避妊に困っている女性には積極的に使用してもらいたいですね。上手に使えばリスクも少ない薬ですし、不安があれば私達にご相談いただければと思います。

 

ーオンライン診療を行ってこられた中で、新たな気づきやメリットに感じている点を教えてください。

コロナ禍の影響で、病院の受診を控えている人が想像よりも多かったことに驚きました。
今までは対面で薬を処方することが当たり前でしたが、そもそも婦人科を受診するというだけでもハードルが高いのに、コロナ禍で感染リスクを考えた時に受診のハードルがさらに高まるのだと実感しました。

しかし、オンライン診療が進むことによりそれらのハードルは無くなりますし、時間に対しても融通が効く点もあります。オンライン診療は、医療者も患者さんにもメリットが高い選択肢だなと思いました。

 

「ピルは生理に悩みを抱える女性達の強い味方」

ーピルを処方する際、気をつけていることや意識していることがあれば教えてください。

ピルの内服を開始する時に、副作用として頭痛がひどくなる方や、薬が合わなくて気分が悪くなる方が一定数いらっしゃいます。そのような症状が現れたら、遠慮なくご相談いただけるようにお願いしています。オンラインでは画面上での診療になるので声のトーンや口調、表情で体調が悪くないか注意して伺うように心がけています。また、こちらからもメッセージが伝わりやすいように、対面での診療に比べて、より慎重に説明するようにしています。

 

ー20-30代の女性へメッセージをお願いいたします。

ピルは正しい使い方をすれば安心して使えるお薬です。生理に悩みを抱える女性達の強い味方になってくれるはずです。また、今まで必要だった外来での対面処方も必ずしも必要ではありません。オンライン診療になったことがきっかけで初めていただくのもいい機会かもしれません。私たち女性医師が対応いたしますので安心してご相談ください。

 

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